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井上ヨシマサ40周年アルバム『再会 ~Hello Again~』発売記念インタビュー


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AKB48など、たくさんのアイドルやアーティストに楽曲提供をしている、作曲家、編曲家、シンガーソングライターの井上ヨシマサ氏の作家デビュー40周年を記念したアルバム三部作をリリースすることが決定。その第1弾アルバム『再会 ~Hello Again~』が2024年7月17日にリリースされました。

本作は、ヨシマサ氏が過去に制作した楽曲を、オリジナルアーティストとデュエットした10曲が収められています。今回、アルバムリリースにあたり、楽曲やアーティストのエピソードを聞きつつ、普段は聞けないようなことも質問しました。

内容が濃くなったため、数回に分けてお届けします。(2024年6月 キングレコード 聞き手:岡田隆志)

井上ヨシマサ【再会 ~Hello Again~】

【収録曲】
1. Someday(小泉今日子・井上ヨシマサ) 作詞:美夏夜 作・編曲:井上ヨシマサ
2. EXCUSE(植草克秀・井上ヨシマサ) 作詞:及川眠子 作・編曲:井上ヨシマサ
3. Rosa(中山美穂・井上ヨシマサ) 作詞:一咲 作・編曲:井上ヨシマサ
4. 旅立つ日~完全版(松山優太・井上ヨシマサ) 作詞:秋元康 作・編曲:井上ヨシマサ
5. ブルーウォーター(森川美穂・井上ヨシマサ) 作詞:来生えつこ 作・編曲:井上ヨシマサ
6. GIFT(広瀬香美・井上ヨシマサ) 作詞・作曲:広瀬香美 編曲:井上ヨシマサ
7. Everyday、カチューシャ(高橋みなみ・井上ヨシマサ) 作詞:秋元康 作・編曲:井上ヨシマサ
8. サステナブル(矢作萌夏・井上ヨシマサ) 作詞:秋元康 作・編曲:井上ヨシマサ
9. 25ans(野村義男・井上ヨシマサ) 作詞:野村義男 作・編曲:井上ヨシマサ
10. バックステージ(郷ひろみ・井上ヨシマサ) 作詞・作曲・編曲:井上ヨシマサ

 KICS-4158 定価:3300円
 井上ヨシマサ(よすす) OFFICIAL WEB SITE

井上ヨシマサ
 Amazon.co.jp: 再会 ~Hello Again~: ミュージック

――アルバムを作ることになった経緯を

井上 40周年を迎えるにあたって、自分1人で歌うだけじゃなくて、今まで携わった人と一緒にコラボで何かできればいいなと思って、第1弾はデュエットでやりました。

 たまにインタビューで「なんでヨシマサ歌ってんの?」って質問をされますが、、作曲家になる前に、自分のアルバムのための音楽活動をやってまして、作曲でこれだけ目立ってしまって、それをやりつつも、自分の作品作りは逃げちゃいけないなと思い細々と続けてます。

歌謡曲とハウスの融合 - 中山美穂『Rosa』

――アルバムを制作するにあたり、曲優先なのか人優先なのかというと?

井上 完全に人ありきです。ただ、キョンキョン(小泉今日子)に関しては、作家デビュー40周年を振り返るにあたって、1作目の『Someday』は入れたいと考えていました。

――中山美穂さんの『Rosa(ローザ)』(1991年)は、当時、テレビの歌番組でよく見かけしました。

井上 彼女は、主体性を持って曲を出していきたいと考えていました。彼女が新しいものを求めていて、僕は久保寛一郎とアレンジからミックスダウンまで完結する為のユニットを組んでいました。テクノロジーを駆使して、新しいものにトライしていた時期でした。

 『Rosa』は、歌謡曲に聞こえないダンスミュージックで、ベースラインだけだとワンコードに聞こえるけど、実際にはそうではない、ちょっと複雑な曲でした。初期のデモはマニアックでDEEPな物でしたが、ブラッシュアップするうちにキャッチーなイントロが出来、さらに彼女の深みのある歌詞と歌声が響きバランスの良い仕上がりになりました。、気がつけば、当時の担当プロデューサーが「最高! シングルで」と決まって。

 ノータイアップだったのに、有線もたくさん流してくれて、ハウスミュージックと歌謡曲の融合がうまくできました。

 この曲によって、彼女も「もっと音楽にのめり込んでいける」と確信できたと思うんですよね。新しいモノを作りたくて、みんな尖ってました。

 この曲を当時秋元康さんが聞いて、「こんなのを日本で作るやつがいるんだ。いつか井上に頼もう」って思ったらしいです。

快く協力してくれた郷ひろみさん

――すごかったのは歳を重ねるごとに、音域が拡がっている郷ひろみさんです。

井上 レコーディングも見てほしかったです。現場の人もそう思っていました。

 この曲は、郷さんの1日だけのコンサートのために作った曲で、支えてくれた人たちに「ありがとう」を伝える歌です。

 郷さんの「やるべきことをやって、やらなくていいことはやらない」って言葉が、僕の中で格言みたいになっていて。ミュージシャンは、やらなくてもいいことばっかりやっちゃうんですよね笑

 郷さんは「レコーディングが控えていたら飲みにも行かないよ。昨日も9時に寝たよ」と言っていました。「この曲のレコーディングのためですか?」と聞いたら「そうだよ」って。

 「ヨシマサくんの40周年の大事な歌でもあるからね!」と。

――松山優太さんの歌もいいなと思いまして。

井上 JULEPS(ジュレップス)というグループで活動してて、松山くんは元々リーダーでやってたんですよ。「それぞれの夢」っていうレオパレス21のCMソングを歌うときにも、レコーディングでちょこちょこ会ってて。

 最近やっと連絡取れて、参加していただくことになりました。

――今回のアルバムの取材で、誰のことについて一番聞かれましたか?

井上 曲で言うと、「ブルーウォーター」(森川美穂)です。

――「ブルーウォーター」は確かに懐かしく、ガールポップのジャンルの走りのような形でヒットしました

井上 森川さんは、アイドルなのかアーティストなのか、どっちなんだろうっていうぐらい当時からかわいいルックスから想像できないほどのパワフルな歌声の持ち主でしたよね。

 彼女は、大阪芸大の教授もやっていて 私が同校の客員教授に就任した関係で再会したんです。先日開催された彼女のファンによるリクエストアワードLIVEでも同楽曲が一位に選ばれました。30年たった今も大切に歌っていて下さること、とてもうれしく思います。

アーティストになった矢作萌夏

――(AKB48を卒業した)矢作萌夏さんの声が変わりましたね。安定感のある声の中に、繊細で透き通った感じが加わっていて、新鮮でした。

井上 声が変わったのではなく表現と歌い方の幅が何倍も拡がったんだと思います。

 今回は、R&Bアレンジしたので、大人っぽい歌唱をリクエストしました。編集後の音声を本人に送ったら、僕の歌い方とのバランスに「?」がついたみたいでした。

 「もうちょっと溶け込ませたい」と言うので、「じゃあ、もう少しウィスパーで歌う方法で(ささやくように吐息が入ったように)やってみる?」と提案したら、「やります。ぜひぜひ」みたいな感じで、もう1回レコーディングに来て、歌い直しました。

 そこにいたのはアイドル矢作萌夏ではなく一人のアーティスト矢作萌夏でした。

高橋みなみに歌活動もしてほしい

――高橋みなみさんも、人優先ですか?

井上 順番としては人ですね。

 AKB48で一番感受性も強く人の幸せを自分の幸せ以上に喜んでくれるたかみな。私の40年の作家活動の中で外せないAKB48からの参加はこの人しかいないと最初から思ってました。Xの動画コメントを見ていただければわかるように、言葉に重みがあるんですよね。

――高橋みなみさんとは交流がありましたか?

井上 はい。僕は、彼女にもっと歌活動もしてほしいと何度も伝えてます! 今回はデュエットという形でしたが彼女の歌声が再び聴けて最高でした。

井上ヨシマサ

井上ヨシマサ的AKB48楽曲の作り方

――AKB48の楽曲作りはどのように?

井上 確かにAKB48の曲が売れていますが、売るのはレコード会社やプロデューサーの仕事。

 僕は、売ろうとして書いちゃうと、いい曲ができないことを知っているので、関係図を見ながら曲を書いています。たとえば人間関係について書いたり、幸せになるために書いたり、フラストレーションを爆発させるものを書いたりしています。

――作曲家は詞を書くわけではないのに、どのように関係性を想像しながら作曲するのですか?

井上 僕は、デモテープで必ず仮で歌詞を書いてます。

 採用不採用は別として、曲にふさわしいエネルギーをぶつけた歌詞を書きます。メロディーだけだと、いろいろ付け足したくなってしまうから、余計なメロディーを書かなくて済むように、関係性を考えて歌詞も書く。そのほうがちゃんと作れるんです。

 『ブルーウォーター』以降、そのやり方をするようになって、人が見える曲をたくさん書くようになりました。

 「あのときの曲どうでしたか?」と聞かれたら、歌った人もスタッフも思い出せて、そのドラマがそこにある。それが曲作りに非常に大事な経験になりました。

 そのやり方でAKB48を作ろうとすると、対象者が多すぎて(苦笑)。AKB48には無数にドラマや感動があって、曲作りのための素材は無限です。曲作りとか仮の歌詞を作る!なんて言うと、とても長尺な楽曲作りを思い浮かべるかもしれませんが、そうではなく、強烈な想いなんてたった一言なんですよ! 一言だし、ワンフレーズなんです! そういう意味でもAKB48は課題がすごく多くて、その分だけ曲が生まれました。

『Everyday、カチューシャ』

――ヨシマサさんが作曲した中で、仮歌詞を作ってて印象深かった出来事は。

井上 出来事というか、『Everyday、カチューシャ』は元々“冷遇されたと思い込んでいる人に対し、僕はあなたが思うより君を愛している、わかってくれ!” という仮歌詞入りのデモでした。水着でアイドルたちが楽しく明るく踊りながらも、どこか哀愁を感じるのはゼロから一になる時の光は残り続けるからなんです。

 私は歌詞というかメッセージを考えないと作曲はできません。ストーリーと関係性が作れるから続けられるのです。

――そのほうが作りやすいのですね。

井上 そうです。『サステナブル』も『カラコンウインク』もそう。『恋 詰んじゃった』もそう。『恋 詰んじゃった』は、新生AKB48ということで、積み上がったものを気にしないでとにかく一から始めよう!って。

――ヨシマサさんのところには、細かく発注が来るのか、大ざっぱなものが来るのか、どちらが多いのですか?

井上 どちらのケースもあります。ただ発注通りに作らないことが多く、秋元さんから文句言われますけどね(笑)。

(次回公開までお楽しみにお待ちください)

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