2019年4月16日に船上劇場「STU48号」で初日公演「GO! GO! little SEABIRDS!!」を迎える直前に、構成・演出を担当した今村ねずみ氏に囲みインタビューをしましたので、その様子をお届けします。(2019年4月16日 広島県広島市 広島国際フェリーポート)
秋元さんやSTUからのリクエストは?
――まず、(運営会社の)STUさんや(総合プロデューサーの)秋元康さんにどういう公演にしてほしいとリクエストがありましたか?
今村ねずみ「秋元さんは『今までのSHOWをぶち壊してほしい。あとはすべてねずみさんに任せます』と。初日楽しみにしていますと。打ち合わせは一度したきりで、二度目のときに、こういう風にしたいというプレゼンをやって、そのあとに、現状、どういうSHOWをやっているのかっていうのを(知るために)広島の公演を見て、今やっているSHOWのスタイルを見せていただいて。
秋元さんから言われた『ぶち壊す』という部分をどういう風に料理しようかなっていうのと、STU48のみなさんの素材を見て、どういった形でSHOWを作ったらいいかなとか、あと、現状、リハーサル期間もそんなに長くないですし、見た感じ、今までのSHOWのスタイルのいいところはそのままにしてよりブラッシュアップしてやればいいし。素直に申しますと、AKB48の楽曲を全然知らなかったんですよ。
たぶん、STU48以外にもAKB48があってほかにもありますよね。たぶんSTUの公演を見ても、もしかして、AKBの公演を見ても博多の公演を見ても何ら変わらず『どこでも同じなんだ』って印象を受けるようなSHOWだったので、『STU48ならではの』というところから始めまして、こういう形になりました」
Act1はAKB48、Act2は海ソング、Act3はSTU48
今村ねずみ「今回は3ブロックになっていまして、Act1というのはAKB48にあこがれて入った方もいらっしゃいますし、彼女たちにとってのアイドル像っていうのがそこに集約されている。じゃあ、あなたたちがAKB48の真似をするんだな、って。あなたたち自体がAKB48のエンターテイメントを本気になってやったらどうなりますか?っていうことを彼女たちに振って、『ただコピーするじゃなくて超えろ』と。
真ん中のところは彼女たちとちょっと話す時間がありまして、どういうことにチャレンジしたらいいか、何をしたいか、何に興味を持っているのか、とか、そういうのを話したら、生で歌う気はあるか? って聞いたら意外と彼女たちは欲しがりなので『やってもいいですよ』って感じなので、とにかく新しいことはチャレンジしたいという欲があったので、じゃあそっちを持ってこようかなと。
あとはSTU48という彼女たちのオリジナルを立てるために、Part3にそれを全部集約させてエネルギーをぶち込んだって感じです。
トークに関してもエンターテイメントというとらえ方をしています。あとは、ここの瀬戸内から生まれた、羽ばたく少女という意味で、『GO! GO! little SEABIRDS!!』というネーミングのもとでSHOWの方向性をとらえさせていただきました。
だから真ん中のところは海ソング、みなさんには懐かしい歌があったと思うんですけど、彼女たちにとっては聞いたことのない歌ばっかりで、でもちょうど今、時代の変わり目ですし、時代をまたいだ公演をやるSTU48なので、それもいいかなと。
彼女たちが歌う曲が(自分の)子どもの頃なじんだ歌だから、彼女たちのフィルターを通すと新鮮だったし、彼女たち等身大の言葉が、その時代僕が感じた言葉よりも今の彼女たちの言葉が聞こえてくるような歌になったかなとは思います。まずはとにかくできるかできないかというより、やるかやらないかってことで、スタートしたって感じです」
メンバー選考は精神力と体力がベース
――メンバーの選考理由は。
今村ねずみ「ぶっちゃけた話、彼女たちのスケジュールがめちゃくちゃタイトでして、彼女たちを苦しめるようなスケジュールだったので、それでもって僕のリハーサルスケジュールもありまして、とにかく全員が揃うっていうことがまずなかったです。
なんだかんだ仕事が、体調が、案件が、みたいなのがあって、集まった日にいたメンバーでベストな人数をその都度選んで、ずっとリハーサルを繰り返した中で、今、現状、今回ロングの公演なので、まずはロングの公演に耐えられる子かどうか、稽古に来るたびに調子がいい悪いとかじゃなくて、とにかく「何が何でも私はやるんだ」みたいな、そうやってガンガンと取りに来てるような子のほうが、まずはそこから選ばさせていただきました。最終的にはそうなっちゃいましたね。
ただ、もっともっと時間をかけて彼女たちのことを見て彼女たちの良さを知っていったら、もっともっと……これは贅沢は話ですけど、彼女たちを鍛えて、またそれでメンバーが変わってきたかなと。
だから今の現状ですよね。たかだか10回ぐらいのリハーサルで答えを出せという指令が来ているので、その中でやった結果このメンバー。
ただ、ロング公演に耐えうるまずは精神力と体力ということがどこか頭にベースあって、あれができる、これができるというのを見つけようとしてこのメンバーになりました」
ゲネプロの感想
――今日のゲネプロの感想と、今後彼女たちの伸びしろをどの部分に見出したかを聞かせてください。
今村ねずみ「結局僕は、彼女たちの今までのSHOWを見たときに、ある程度お客さんと一体化するシーンがあるじゃないですか。
僕が見ると実は時間軸が彼女たちになくて、知らないうちにお客さんのほうにSHOWの流れの時間軸がある。僕の個人的見解ですけど、これをいかに彼女たちが自分たちが作り上げた空間と時間をお客さんに提供するか。
今日のゲネプロだと、どこかまだ『ここだ』というところのポイントが今日もちょっと……自分たちが描いたストーリーをやりきるということに関してはちょっと甘いところがあったし、ただこれはライブなので、どうなるか分からないというところで、彼女たちは迷わずにお客さんたちをどこまで自分たちの世界に引き込めるかっていうのがポイントで、今日は緊張してたかなと」
伸びしろについて
今村ねずみ「彼女たちの伸びしろについては、それは全然あるんじゃないですか? 僕はここの現場に来て彼女たちのことをアイドルとして向き合ってSHOWを作ってないんですよ。
彼女たちと正々堂々と、いちパフォーマーとして向き合いたい。秋元さんにもこちらのスタッフもメンバーにも言ったので、僕は還暦なので(メンバーにとって)おじいさんの世代ですよね、スタッフは僕の子供世代ですから、その中でジェネレーションが違うけど、この現場に関しては一切そういうのを抜きにして、パフォーマーとして向き合ったので、そういった意味では最初っから大人、子供関係なく、パフォーマーとしてちゃんとここにいるのかいないのかというところで向き合ったので、そのへんが彼女たちの中で芽生えたんじゃないかなと。
あとはそれを覚醒させるのは自分自身なので、それを少しずつ自覚してきたメンバーがいるのでここにとどまらず、もっともっと羽ばたいてほしいなという意味も込めて、海を選んだ少女だけどそこから羽ばたいていくと。(伸びしろ)あると思いますよ」
「夢ってかなうじゃん」
――公演のタイトルは。
今村ねずみ「タイトルは秋元さんに最初にプレゼンしたときに提示していました。シチュエーションと船、郷土愛、ここから飛び立つ、スタッフもこれに2年間かけているという想いも、僕もここ何日間で船でリハーサルさせて、いい大人が冗談で言ったようなことがこんな形になっててことが本当、このスタッフの方たちに、この年になって『いやぁ夢ってかなうじゃん』みたいな。
夜な夜なずっとそういうことを語ってる方たちなので、ずっとそれにこだわってやってらっしゃるスタッフとメンバーなのでここ何ヵ月かの付き合いしかないけど、ひとつの夢に向かってみんなが集まって形にするっていう意味ではこの年になってすごくいい経験させてもらったな感じがします。こういうメンバーに会えて良かったなって思います」
――青い布を客席に覆いましたけど、あれは?
今村ねずみ「海!」
――毎回やられるんですか?
今村ねずみ「やります。みんなが文句を言おうが、とにかくなんか海の中にみんなを連れていきたい、海に連れていきたいって、シチュエーションが船なので、それでみんなでスタッフに夜な夜な作っていただいて、彼女たちは海から出てきた、海を選んだ少女だ、そこで生きるんだ、そこでもっと羽ばたいていくんだって中から波がはけたら彼女たちがいて、終わったらまた海に帰っていく。
最後にフラッグが残っているという、それは僕の中ではストーリーは完結しているんですけど、残念なことに仲間では完結していない奴がいる(笑)ので、波。もっともっとお客さんをそういうところに連れていきたいなって。こういうシチュエーションで」
今村ねずみ「これが近県を回るわけじゃないですか。すごく素敵だと思いますよ。劇場ごと行っちゃうわけですから、ほかにない。ほかにもないし既成のアイドルグループがやってることにとらわれる必要がないし、彼女たちがもしかしてこういうSHOWの先駆者になるかもしれない。それはそれでAKBはAKBであこがれて入った方々かもしれないですけど、それはそれでちゃんと全うしたいだろうし好きだろうし、でも、それはそれで自分たちの世界作りに関しては誰にも何も縛られることがないんで、ガンガンやってもらったほうがいいと思います。
アイドルとか役者とかダンサーとかじゃなくて、(新しいことを)やれる可能性がある方たちなので。こういうスタッフもいるのでやればいいと思います。面白いと思います。僕もこういうシチュエーションだから参加したいなと。だって『船に劇場作ってSHOWやるなんて何それ?』みたいなところで、それにアイドルグループはどうですか?って感じだったので、そのムーブメントが面白くて参加させていただいたっていうのが僕の本音です」
選抜メンバーを教えてくれなかった
――今回シングル曲を歌う選抜メンバーがだいぶ初日メンバーに入っていたかった一方で、日の目を見ていなかったメンバーがセンターをやったりとか、ファンの目からは驚きだったんですけど。
今村ねずみ「森下(舞羽)さんとかでしょ? それはこの(STUのスタッフ)人たちが意地悪で、そういう選抜メンバーを一切僕に教えてくれなかったんです。それは秋元さんもそうでした。『今村ねずみさんが来て、こういうグループのSHOWを作るとどうなるかを僕は見たい』って。乱暴でしょ?(笑)。
だから楽曲もってなったら縛りがありますよね? 僕は全然関係ない曲をアレンジするから、それもちゃんと秋元さんに言って、今回この公演に携わるので秋元さんの楽曲を聞いたんですよ。すごくいい、キャッチーなフレーズとか、僕ぐらいの年でも、『この歌歌いたいな』『来るな』、っていうのがあって、ああいうナンバーをはさむことによって、僕の個人的な見解ですけど、秋元さんのナンバーがこれまた引き立っちゃうなって思ってるんです。僕にとって。
秋元さんもああいう世代を生きた方だから、逆に余計に新鮮に僕は感じましたね。今までのセットリストに関してまわりのみんなは一切、そういう情報は入れない。だから、『お好きなように』って感じで。で、最終的に選ぶ段階になって、運営のほうといろいろ話し合って微妙な調整はしましたけど、最後の最後まで本人たちの体調とかあったので、このSHOWに参加できるようにいつでもなるべく彼女たちにつきあってもらって、『こういう風に作るからね、こういう流れだからね』、っていうことで、イメージをとにかく言って、舞台の上に上がらせる稽古はしたんです。だから最終段階で全体的な像は彼女たちの中ではつかんだので、最終的な微調整はしたって感じです」
チャンス、可能性を広げていける場でありたい
――ピアニカやバレエ、サックスが得意な方が出られないときにはどういう風にしていく予定なんでしょうか。
今村ねずみ「そこで違った味でできる子をピックアップするとか、ピアニカができないなら違う楽器ができる子とか、あとはもしかして芝居っぽくやるとか、適材適所でメンバーを選んでやると。それがはまるかはまらないかはわからないですけど、とにかくそれは自分たちはそういう風な方向性でやるというのはメンバーに伝えてあるので、準備はしておいてくださいと言いました。
たぶん来るたびにメンバーが違うポジションにいたらSHOWの流れとか印象が違ってくる感じがするのは事実なんですけど、ただ絶対というのはない、いろんな形で、Act2の歌のところはその日のメンバーの世界観で。あとはメンバーが楽器を挑戦したいって方もいるし、それはそれで出来上がったら挑戦させたいち思うし、そういう場でありたいなと。
彼女たちにとってもチャンス、可能性を広げていける場でありたい。その代わりそこに行くまではちゃんとやれよ、自覚を持ってやれよ、ってことは彼女たちに言ってあります。たぶん違う日に見に来たら違うメンバーがやってたらそれはそれでいいか悪いかはあるかもしれないけど、違った意味で伝わるんじゃないかなと思っております」
公演を見たり公演についての自分なりの理解を深めるための参考にしていただければ幸いです。(撮影・取材 岡田)