交際写真を撮られたことが原因で、2005年4月14日、レッドカードをもらって1発退場になった矢口真里ですが、潔く辞めたとも思えないので書くことにしました。
テクストの検証
事務所が出したコメント(平成17年4月14日付け)、【『モーニング娘。』リーダー「矢口真里」についての重要なお知らせ】(別窓で開きます)は、慌しさの中でまとめられた文章のようで、お世辞にもわかりやすいとはいえません。
長々とした文章を簡単にまとめると、「矢口真里から辞めたい、と申し出があったので承認した」、ということのようです。
こうした場合、世間の一般常識として、こんな文章を使うものです。
「矢口真里からモーニング娘。脱退の申し出があり、事務所としては石川梨華の卒業、新曲の発売が迫っており、なおかつ、コンサートツアーの最中でもあることから、翻意をうながしましたが、本人の決意が固く申し出を受け入れることにしました」
事務所と矢口真里が何日間も話し合うというのは、普通、モー娘。脱退を撤回させるために説得していた、と考えられますが、コメントを読む限り、引き止めた形跡はみられません。つまり、別の問題で話し合っていたことになります。
生々しいコメントを読むと、矢口真里にレッドカード(交際写真の件)を突きつけ、「リーダーとしての自覚」を追及して、「辞めたい」という発言を引き出した、という印象すら受けます。
本来、矢口真里の「すみませんでした」の一言で決着する事案のはずですが、そうならず、問題が大きくなったのはなぜなのでしょうか。
私が驚いたのは、写真の件ではなく、そのことが原因で卒業コンサートもなしに脱退、早い話、「クビ」という処分が下ったことです。
世間では、突発的な事件と思われていますが、私は別の原因が伏在していると思っています。なぜなら、今年2月の段階で「矢口真里政権は短命!」、というコラムを考えていたからです。
安倍なつみとの違い
22歳のアイドルが交際写真を撮られたからといって、辞めるほどのことなのか、という素朴な疑問をみんな持っていると思います。なぜなら、半年前の安倍なつみの盗作問題が脳裏をよぎるからです。
盗作(触法行為)をして2ヵ月の謹慎なら、今回(俳優との交際―道義的責任)は1ヵ月の謹慎でも重いくらいで、口頭注意で十分のはずです。それに、安倍なつみ自身、かつて交際写真を撮られたことがあり、そのときは仕事のうえで干された印象はありましたが、辞める、辞めないまで発展したとは聞いていません。
安倍なつみは、ハロプロの象徴だから比較にならない、と言われれば確かにそうですが、矢口真里だって「タンポポ」、「ミニモニ。」で十分な実績をつんでいます。2人の処分の違いは、なぜなのでしょうか?
矢口真里は足利義持になりたかった?
少し話を広げましょう。気がついている人も多いと思いますが、モーニング娘。とBerryz工房はまったく異質のユニットです。
家族主義、ファミリー主義を掲げるモーニング娘。、現地集合、現地解散ユニットと揶揄(やゆ)されているBerryz工房、同じ事務所のユニットとは思えない両極端の構造になっています。
矢口真里がリーダーになって最初に手をつけたのが、この「家族主義、ファミリー主義」からの離脱だったようです。確かにモー娘。は、公私混同の度が過ぎる仲良しグループ、という印象があります。
「娘。ドキュメント2005」で流れた矢口真里主導のモー娘。ミーティングを見ていたら、ふと足利義満の政策をことごとく覆した室町幕府第4代将軍、足利義持を思い出しました。
義満といえば金閣寺ですが、歴史的には皇位簒奪(さんだつ)計画のほうが重要テーマで、あと一歩で天皇の位が手に入ったのですが、義持の登場で水泡に帰してしまうわけです。閑話休題。
新リーダー・矢口真里は、自分なりに危機感をもっていて、モー娘。を変えようとしたのだと思います。その手始めが、紺野あさ美、田中れいなのボーカルレッスンと、亀井絵里のダンスレッスンだったのですが、結果として矢口真里の脱退を見越していたかのように、役に立ったわけです。偶然でしょうが。
交際写真は単なる口実で、モー娘。の根幹であるファミリー主義を放棄しようとしたから事件が起こった、と思っています。なぜ、矢口真里がモー娘。の伝統を壊そうとしたのかは不明ですが、事務所としては容認できなかったことだけは確かのようです。それが、安倍なつみと矢口真里の処分の違いになって表れたと思われます。
菅谷梨沙子の天国
モー娘。のファミリー主義もBerryz工房の個人主義も極端すぎて容認できません。ホント、なんとかしてほしいものです。
理想は、この中間(理屈ではわかっていても現実的には難しいですが)にユニットを持っていくことだと思いますが、どうでしょう。
Berryz工房がそうなって一番喜ぶのは、菅谷梨沙子でしょう。3月末から4月上旬にかけて行なわれたBerryz工房の握手会、菅谷梨沙子は皆勤賞でしたし、元気で機嫌も良かったみたいです。
期間中、夏焼雅を触りまくっていたから機嫌が良かった、というのは悪い冗談ですが、新曲「スッペシャル ジェネレ~ション」の振り付けを見ていれば、菅谷梨沙子が元気になる理由はわかります。
Berryz工房がファミリー主義になれば、菅谷梨沙子にとっては天国になりますし、菅谷梨沙子がハッピーになれば、すべてが丸く収まる構造になっているのがBerryz工房です。
矢口真里の一件は、表面上モー娘。の問題となっていますが、深読みすれば、キッズ(商売になり始めています)から矢口真里の影響を払拭したかった、というのが本音とも考えられます。
Berryz工房のシングルV(2005年4月20日発売)を見ると、昨年とは何かが変わった印象を受けます。堅物キャプテン、清水佐紀のキャラも変わりはじめて、それが他のメンバーに伝染して……事務所が望んでいた方向に動き始めたようです。
あとは、相互にお泊りが出来るかどうかだけなのでしょうが……。