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選曲講座 2008年注目の楽曲

written by KEN

  Last Updated: 2008/10/06
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「選曲講座」3年ぶりの復活です。

オーディション、スクールの発表会の現場においては、ここ数年、キッズ系中心のダンスパフォーマンスがクローズアップされ、ボーカル系は隅に追いやられていた感がありますが、今年に入って、avexが運営している芸能スクール「avex artist academy」(aaa)でも頻繁にボーカルコースの発表会が開催されるなど「ボーカル(歌)復権」の空気が感じられるようになりました。

それに合わせて、新時代の「現場でよく歌われる楽曲」も出現しています。
今回は、その中から、2008年にリリースされ、そうした「現場」(ここではオーディション、スクールの発表会のことを指します)で人気を博している3曲を取り上げてみましょう。

(1)「愛をこめて花束を」Superfly(2008年2月27日リリース)

今年2月にリリースされて以来、私が取材に行っている現場ではほぼ100%歌われている楽曲です。

Superfly は、60年代~70年代のソウル・ウェストコーストサウンドを大胆に取り入れて、オジサン世代からも熱い視線を浴びています。ユニット名(現在は、Vo.越智志帆さんのソロ)からして70年代ソウルの名曲から取っているわけですし、往年の洋楽アーチストたちを思い出させてくれそうな音作りには、いつの時代にも変わることのない、音楽に対するアーチストの思いが伝わって来るようです。

一方、歌詞のほうは「ウエディングソング」の定番を狙ってはいるものの、比較的中・高校生にも理解しやすい恋愛の世界が描かれており、この辺が、特に10代の歌手志望の人に多く歌われている要因ではないかと感じています。

たまたま、You Tubeで「愛をこめて花束を」のプロモをチェックしていた際、現在、あるアイドルユニットで活躍している中学生の女の子(当時14歳)がライブで歌っている動画に出くわしました。

これがなかなか味のある歌で、ストレートな声の出し方が、楽曲の前向きな恋愛の世界に実にマッチしており、なぜ、10代の女の子に人気があるかがよくわかるシーンでした。

最近では、アクターズスクール広島の歌姫、住田花菜さん(15歳)がイベントで熱唱を続けているのが記憶に新しいところです。彼女は、後述する「いきものがかり」が活躍している「CUBE」という事務所に所属して、作詞、作曲の勉強も進めているそうです。本格的なアーチストとしてのメジャーデビューが待たれるところです。

このように、楽曲自体は、斬新だとか、先端を走っているというわけではありませんが、若い人が、この曲を聴いて「心を動かされた」とか「涙が出そうになった」と感じたなら、それで十分です。越智志帆さんの声質は、骨太ながらもそんなに強いクセのあるものではなく、比較的歌う人が色付けしやすい気がしますので、歌唱力に自信のある人なら、チャレンジし甲斐のある曲のように思えます。

(2)「ブルーバード」いきものがかり(2008年7月9日リリース)

こちらも「SAKURA」「花は桜 君は美し」などのバラード系、「夏空グラフィティ」やこの曲などのバンド系といった、少々懐かしいサウンドに、中・高校生にも理解しやすい歌詞を乗せている点では、Superflyと共通項が見受けられます。

メジャーデビュー曲の「SAKURA」は、2年前の夏に、平尾昌晃ミュージックスクール発表会「HMS SUMMER AUDITION 2006」で当時12歳の関口仙子さんが熱唱したのが思い浮かばれます。このとき、彼女は最優秀賞を受賞。以来、今年の春まで、最優秀賞4連覇という快挙を成しとげたのは記憶に新しいですね。

ちなみに、先日開催された「HMS SUMMER AUDITION 2008」では4組の生徒が「ブルーバード」を含む「いきものがかり」の楽曲を選曲。平尾昌晃ミュージックスクールではなかなかの人気アイテムのようです。

さて、最新曲の「ブルーバード」は、冒頭でもコメントしたように、アニソンテイスト満載のバンドサウンドで、ちょっぴり歌謡曲っぽいメロディも内包されており、バンド系の楽曲が好きな人はもちろん、80年代の歌謡曲(アン・ルイスなど)を歌いこんでいる人にもフィットしそうです。AKB48ファンには「Blue rose」(K 2nd、B 1st)、「Confession」(ひまわり2nd)のようなサウンドと言えばわかりやすいかもしれません。

「いきものがかり」を実際に歌った女の子に聞いたところ「思った以上に音域が広く、キーの設定に苦労しました」と話していました。もし、現場で歌う予定のある方は、本当にキーが自分の音域と合っているかどうかを今一度確認したほうがいいと思います。

このように、バラード系から、バンド系まで、幅広い分野の楽曲を世に出している「いきものがかり」、それだけ、メンバー・プロデューサーが、数々のジャンルの音楽を吸収、自分たちのものにして「売れる曲」に再構築する才能に長けているのでしょう。

(3)「JUNGLE DANCE」谷村奈南(2008年5月7日リリース)

イントロを最初に聴いたときには、80年代後半~90年代前半のバブル期を思い出させるサウンドに、あまり肯定的ではない懐かしさを覚えたものですが、クセになるサウンドであるのは昔も今も同じで(笑)、この記事を書くまでに何10回とリピートして聴いていました。

谷村奈南さんといえば、やはり「Gカップ現役女子大生シンガー」というキャッチフレーズがあまりにも有名です。「Gカップ」は、グラビアに興味を示す多くの男性ファン、男性系のメディアを引き付けるには十分な「記号」ですし、「女子大生」も、現役女子大生シンガーとして確固たる地位を築いている青山テルマさんと比較できることを考えると、いやがおうでもマスコミが飛びついてくれるキャッチフレーズであるのは間違いないでしょう。

声質に関しては、音域はあまり広くないものの、ボーカルスクールで基本を忠実にレッスンしたような、メリハリのある発声をしていて、決して悪い印象は受けませんでした。

ただ、もし「Gカップ」という付加価値がなければ、おそらく、どこにでもいる普通の歌の上手い女子大生(スカウト時は女子高生)として、オーディションで埋もれてしまっていた可能性も高いと思います。メジャーデビューの敷居が高くなっている現在では、歌以外で「ウリになる」部分を持っていることが、いかに強いアドバンテージになっているかを如実に示しているような気がしています。

このように、純粋な「歌唱力」以外で自身のキャラクターをアピールしやすい点では、先に紹介した2曲とは対照的に、歌手志望以外の人に向いた楽曲だと私は考えています。

プロモーションビデオほどの演出は必要ないでしょうが、まずは、自分の納得する範囲で肌やカラダの線を露出して「谷村さんとは違ったオンナの魅力が、あたしにはあります!」くらいの気持ちで臨むと、観ている側、審査している側もかなり反応してくれるのではないかと思います。プロポーションでは負けないと思っている人はぜひチャレンジしてみてください!

4thシングルの「If I'm not the one」は実にオーソドックスなバラードナンバー。バラードを歌うと不思議と絢香っぽく聴こえますね。オーディションやボーカルレッスンの時には、絢香さんの楽曲を頻繁に歌っていたのでしょうか?

発表会はM-1グランプリ?

先日、ある芸能スクールの発表会に足を運んだ際、観客席にいた出場者の中から

「発表会って、まるで『M-1グランプリ』みたいだよね!」

という声が聞こえました。

ボーカル系は、基本的にはピン(ソロ)での出場ですから、厳密には「R-1グランプリ」と言うのが正しいのでしょうが(笑)、いずれにせよ、若い人たちが、我々が古くから親しんできた現場をそうした感覚で捉えてくれることは、非常に新鮮なことですし、嬉しいことでもあります。

今後、本当に「ボーカル復権」の機運が盛り上がれば、まさに、ボーカル版の「M-1(R-1)グランプリ」と言えるようなイベントが開催されるかもしれません。さしあたっては、ボーカル系の芸能スクールに「V-1グランプリ」(仮称)のような企画を考えてほしいところです(笑)。

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