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芸能サイトの演出方法

written by 岡田隆志

  Last Updated: 2002/10/21
Released: 2002/10/04
本記事を無断で複製・転載することを禁じます。
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前回は本サイトの作り方の紹介をしたので、今回は少し話を広げて、一般的な芸能サイトの演出方法について書いてみます。

はじめにおことわりしておきますが、以下にあげる例はどこかのサイトの具体的な例を指しているわけではありませんし、批判するつもりもありません。それを理解していただいたうえで「もしかして私たちが作っているサイトのことでは?」と思えるようであれば、あなたが関わっているサイトは今以上に良くなっていくでしょう。

また、今回はファンサイトは対象外にしていますので、その点は差し引いてお読みください。

オフィシャルサイトに最も必要なもの

芸能関連企業で働いていてこのコラムをお読みの方の何割ぐらいが自社サイト、所属タレントサイト(いわゆるオフィシャルサイト)をお持ちでしょうか。たぶん半数近くの方がWebサイトをお持ちになられているかと思います。

ファンやマスコミがいちばん知りたい情報は何だと思いますか?

「なんてくだらない質問をするんだろう、こいつは」

そう思った方は以下は読まなくても大丈夫だと思いますので、自社サイトのリニューアルプランを練ってください。

私が考える「オフィシャルサイトに最も必要なもの」とは、所属タレントの正確なプロフィールと、所属タレントの最新スケジュールです。実のところ、「最も」というより「最低限」なのですが、その最低限ができていないオフィシャルサイトがいかに多いかは私が言うまでもなく、みなさんが毎日Web上で体験していることでしょう。

日本では1998年から2000年にかけて一般家庭にパソコンが普及するとともに企業のホームページも爆発的に増えました。その時期には「とにかく作る」ことが目的のホームページ(以下、「サイト」と表記します)が多数を占めていたようですが、2002年も終わりそうな今となっては、もはや「作る」ことそのものが目的のWebサイトは誰も相手にしてくれません。

プロフィールとスケジュールが重要なわけ

オフィシャルサイトに所属タレントの正確なプロフィールと最新スケジュールが載っている場合と載っていない場合に、サイトの訪問者(マスコミ、仕事の依頼主、商品を買ってくれるファン)にどういう影響があるかを考えてみましょう。

ファンあるいは、ファンを代弁する形でマスコミ関係者がタレントに興味を持ち、オフィシャルサイトを訪れたとき、プロフィールとスケジュールが載っていた場合のユーザ(サイト訪問者)の反応は以下のようになるでしょう。

「必要な情報を手に入れることができた」
「安心した」
「感心した」
「Webに理解がある事務所だ」
「新しいことにチャレンジする気概のある事務所だ」
「ファンのことを大切にしてくれる事務所かもしれない」
「実際の仕事も期待できそうだ」

こう思われたらしめたもので、タレントを好きになるばかりか事務所も好きになり、サイトのリピーターになってくれることでしょう。

いっぽう、広告や営業の仕事を依頼する際、候補にあがったタレントを検索した結果、オフィシャルサイトよりもファンサイトや他社サイトの情報が詳しくて新しかった場合……。

「このオフィシャルサイトは使えない」
「Webに予算を割けないかわいそうな事務所だ」

となります。悲しいですがこれが現実で、一度ユーザに「使えない」という烙印を押されてしまうと二度と来てくれません。それはちょっと大袈裟ですが、次にいつサイトを訪れてくれるか期待しないほうがいいでしょう。

タレントの個性を売る芸能事務所のサイトですからまだいいですが、これがどこでも買えるような商品を扱っているECサイトでしたら、間違いなく「使えるサイト」に顧客を奪われてしまいます。

ですから芸能サイトを運営するときには、以上のようなユーザの声を常に念頭に入れながら、プロフィールやスケジュールのメンテナンスが容易にできるようなワークフローを心がけるようにしてください。

最低限のついでに、会社情報(地図、電話、FAX、担当者名、Email)も当然わかりやすい形のページを作っておいたほうがいいでしょう。その際、モノクロのプリンタで印字されることも考慮に入れたページ作りをしてください。背景が濃い色で文字が白っぽかった場合に、ユーザは「背景を印刷する」オプションにチェックを入れてWebページを印刷しなければならなくなります。

これから事務所を訪問してくださる方に、FAXでいちいち地図と住所と電話番号を送らなくてもいいように、Webサイトにすべてのものを用意することはユーザのためばかりでなく、自社の省力化にもつながるのです。

芸能サイトに邪魔なもの

以下にあげるのは本来なくてもいいもので、あったからといってサイトのブランドイメージが上がるわけでもないし、かえって逆効果になる場合もあるので、よく考えて設置するようにしましょう。

★スプラッシュ画面

サイトオープニングのFLASHなど。定期的に変わり、デザイン的にもブランド的にもユーザを満足させるようなものでなければ邪魔なもの。関係者が飛ばして見るようなものをユーザに見せるのはやめたほうがいいです。

★アニメーション

素人っぽくなるのでやめたほうがいいです。同じようにJavaScriptロールオーバーも素人っぽいものだとかえってブランドイメージを下げてしまいます。手作り風のファンシーなボタンも同様で、タレントが自作でやるのなら話は別ですが、事務所が素人っぽいことをわざわざやるのは本当に「邪魔」なのでやめたほうがいいと思います。

★ファイルサイズの大きい画像

ブロードバンドの時代になってきたのでファイルサイズは以前ほどは気にしなくてもいいかもしれませんが、オフィシャルサイトはタレントのイメージをWebを通してダイレクトに発信する大切なメディアです。

むやみにファイルサイズや点数を多く公開するのではなく、品質がよくてかつ、ファイルサイズの小さい決定的なショットを少しずつ増やしていくほうが効果的です。そのほうがサイト運営者、タレント本人、ユーザすべてのためになります。

★カウンター

実はあまり必要ありません。アクセスが少ないことをユーザにわざわざ披露しなくてもいいです。アクセスの多いサイトはカウンターはつけていません。アクセス数を知る方法はほかにもありますから。

芸能サイトにあるといいもの

最低限必要なものを設置し、邪魔なものを減らしていったのちにすることは何かを考えていきましょう。

★デザイン、機能ともに優れたトップページとナビゲーション

これはプロに頼みましょう。写真やパンフレットはプロに頼むのに、最も多く見られる可能性があるWebメディアは手作りというのはブランドイメージの低下にほかなりません。

高い金を出してデザイナーの言いなりになるのではなく、自分たちが事務所からタレントのプロフィールとスケジュールを更新できる方法を提供してくれる制作会社を選ぶことです。自社の方針やブランドを理解したうえでデザインやナビゲーションをしてもらうことも忘れないでください。

★タレント参加機能

宇多田ヒカル、中田英寿のサイトがやっていることは実際のところ、単なる日記ですが、それだけでも世の中に与える意味は全然違うのです。事務所とタレントの信頼、タレントとファンの信頼があってこそ、こういうコミュニケーションができるのです。

小さい規模でしたら掲示板の本人参加も意味があります。21世紀型のタレントとファンのコミュニケーションにWebは欠かせません。大きなビジネスをやっている宇多田ヒカル、中田英寿がそれを証明していることをお忘れなく。

アイドル系ならば手書きメッセージは必須です。スナップショット(この場合、画質が悪くても構わない)も有効に活用すべきでしょう。リピータを確実に増やせる、オフィシャルサイトならではの演出といえます。

★有効活用されているリンク

これはオフィシャルサイトでは意外に難しいかもしれません。インターネットにつながっているWebサーバに公開されたリソースは、無許可でリンクを張れますし、手元のコンピュータに保存(コピー)できます。

その仕組みを知っている人から見たら、リンクを許可制にするのはWebメディアの特長を理解していないか、リンクを張られたら困るサイト構成(フレームなど)にしている、ユーザビリティが低いサイトだと判断されます。

人に見せるために公開しているのに、なぜ面倒な許可制にして多くの人に見せる機会を自ら減らしているのでしょうか。許可申請に対して、申請サイトを審査して許可をするために、いくら人件費がかかると思いますか? そしてもし許可申請を無視(あるいは拒否)した場合のブランドイメージのロスを考えたときに、許可制をうたうメリットがどこにあるというのでしょうか。権利やブランドを守るべき局面はもっと別のところにあります。

オフィシャルサイトから関連サイトに気軽にリンクを張れるのは、せいぜいレコードメーカーのサイト、スポンサーのサイト、業界団体のサイト、マスコミのサイト、一般的なポータルサイトや検索サイトどまりでしょう。

「それ以外に何があるんだ!」と、お叱りを受けそうですが、Webというメディアは「会うはずのない人と人が出会える場所」なのです。

たとえば所属タレントが現在興味を持っているもの、これから仕事に結びつけたいものに積極的にリンクを張ることで、CMのスポンサーがつくことだって十分ありえますし、舞台の仕事が入ってくることだってありえるのです。Webというメディアが持っている力と可能性を、現在の事務所のコンセプトに合わせて活用することが、芸能サイトの演出につながっていくのではないでしょうか。

Webサイトの基本

Webに関する講師をしている関係上、熱く長くなってしまいましたが、芸能サイトの演出方法を考えるにあたって最後に基本的なことをまとめておきます。ファンサイトを作る方にも参考になると思いますし、芸能以外のサイトでも活用できるごくごく当たり前のことですので拍子抜けしないでくださいね。

★サイトの目的

サイトをどのような目的で開設、運用していくか
サイトの運営資金と目的の関係をしっかりとらえる

★ターゲット

ファン(ユーザ)なのか、マスコミなのか、スポンサー(取引先)なのか、どのあたりの層に絞ってサイトを作っていくのか
年代、性別、職業、年収、教育水準などを具体的に考えてみる

★内容

目的とターゲットに照らし合わせてどんなコンテンツが必要か

★期待される効果

目的とするターゲット層に対してどういった恩恵を与え、どのように目的を果たしていけるのか

堅苦しくなってしまいましたが、タレントをプロモーションするための一環としてWebを活用する方法はいくらでもあります。技術的な本は書店に山ほどありますので心配することはありません。

問題はアイデアをどうWebサイトに落とし込むかです。それをこのコラムで触れる余裕はありませんが、たとえばの話、 あなたの事務所にとって「スクランブルエッグon the Web」が利用価値があるとお考えでしたらぜひご活用ください。期待に応えられるパートナーになれるように日々精進しているつもりです。それでは検討をお祈りしています。

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