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時代を味方につけよう

written by 岡田隆志

  Last Updated:2018/04/21
Released: 2002/07/04
本記事を無断で複製・転載することを禁じます。
copyright(c)2001-2022 Scramble-Egg Inc.

このコラムは2002年に初めて書かれたものですが、今でも数多く読まれているため、時代の変化に合わせて2010年代後半に読んでも理解でき、通用する項目に絞り込んで書き直したものです。

第一印象を変えるには」「アクションを起こそう」を読んでいただけましたでしょうか。今回は「時代を味方につけよう」というテーマでお届けします。

あなたという“商品”の価値

中身を重視する人こそ、人に与える印象に気を配るべきだと、「第一印象を変えるには」で説明しました。そして、失敗を喜んで受け入れる勇気を持とうと、「アクションを起こそう」で説明しました。

これらは芸能界を目指す人だけにいえることではありません。社会人になって、人や世間に流されずに、自分の夢をかなえようと思っている人(私もその一人です)すべてにいえることだと思っています。

アクションを起こすための資料を作ろう、と前回書きました。その資料はもう作りましたか? 作っていない人は現時点で作っている人から遅れをとっていることに気づいてください。

作った資料をもう一度見直してみましょう。その資料はあなたのスタイル(将来性や個性)を表しているかを点検します。その次に、あなたの作品や個性を“商品”と考え、売る側の立場に立って考えてみるといいでしょう。

  • あなたという“商品”を買ってもらえる対象はどんな人たちだろうか
  • あなたという“商品”は、売るに値する値段がつけられるものなのか
  • あなたという“商品”を売る人たちはあなたのために情熱を持って売ろうとしてくれるだろうか
  • あなたが作る“商品”は、将来、もっと売れるものだろうか

おおまかにいうと、以上の4点の視点であなたの商品価値を自分で測ってみるといいでしょう。自分で「これじゃどうしようもない」と思うようなら、もう一度プランやスタイルを練り直して資料を作り直す必要があります。

「私はアーチストであって……」とプライドを持つのも大切ですが、あなたを売ろうとしている人たちは芸術の法則ではなく、経済の法則にのっとって動いていることを忘れないでください。しかも経済の法則にのっとったほうが成功する可能性が高くなります。学生の人にはわからないかもしれませんが、社会に出ればすぐにわかります。

つんく♂の「努力」に学ぶ

あなたは、将来スタッフになる人、将来ファンになってくれる人にあなたの価値を説明できるようになるのが理想的です。それは口頭でもいいし、態度でもいいし、作品でもなんでもいいでしょう。あなたの得意な方法であなたなりの個性をアピールしてください。

あなたを採用するとどういう特典があるかをわかりやすく説明しろ、などと難しいことは言いませんが、あなたの「自分自身の付加価値」は自分で考えておくに越したことはありません。売る側はあなたに付加価値をつけるたくさんの方法を知っていますが、より多くの材料をあなたが持っていればもっとあなたをメジャーにしてくれるでしょう。

ハロー!プロジェクトで一世を風靡(ふうび)したプロデューサーのつんく♂さんも明確なポリシーを持っています。

 つまりこういう事だ。庶民は天才にはなれない。そして天才には勝てない。一般庶民は天才にはかなわないのだ。例えば世の中に男が100人いるとしよう。多く見積もってもその中に天才は3人といないと思う。仮に3人として、庶民には4位になれる権利があると思え! 少なくとも俺はそう考えながら生きて来た。これからもそうだ。すべての男の中で4位になろうじゃないか。少なからず「あんた、売れたからいいよな」の俺ぐらいにはなれるのだ。なぜなら俺も天才ではなく庶民だから。

『HOT-DOG PRESS』(講談社) 1998年8月10日号 新連載「四位狙い」より

つんく♂さんは一見、好き勝手にやっているようにも見えますが、彼のシャ乱Qやモー娘。やハロプロでの活動のよりどころは上記に引用した部分にあると私は考えています。

それが明確な形で現れているのは「そうだ! We're ALIVE」(モーニング娘。)の冒頭・サビの部分でしょう。歌詞のサビに「努力」が4回も出てきているのは驚きですが、それも上記のポリシーに照らし合わせれば納得いくのではないでしょうか。

時代を味方につける

“天才ではなく庶民”のつんく♂さんは努力して4位を狙いました。その結果、シャ乱Qをヒットさせ、モーニング娘。を大ヒットさせ、つんく♂ブランドを確立していきました。

実際に売れていく段階で商品に付加価値をつけていったのは、本人たちではなくプロデューサー、事務所の統括マネージャー、広告代理店の営業マンなどのプロフェッショナルたちです。それらの人に目をつけてもらうためにはどうすればいいのでしょうか。

それに答えるのは簡単ではありません。“売れた”法則は分析できても、“売れる”法則はあらかじめ予測するのは難しいのです。

私はアーチストやタレントが売れていく過程を何人も見ていますが、売れはじめるきっかけをつかむための確固たる法則はありません。ただ、売れはじめてからは雪だるま式に売れていきます。それは「ブランド」という価値をつけられた場合によく起こります。

この文章を初めて書いたときだと「モー娘。ブランド」「つんく♂ブランド」となるでしょう。もっと前なら「安室奈美恵」「小室哲哉」、もっと前なら「おニャン子」「秋元康」、「ピンクレディー」「キャンディーズ」「山口百恵」……売れはじめたら止まらないのです。

2010年代ならば「AKB48」「乃木坂46」「欅坂46」「秋元康」ブランドになるでしょう。

これらの歌手、プロデューサーに共通点を見いだすのは難しいのですが、ありきたりのキーワードを使うと“時代を味方につけた”ことが共通点といえましょう。

モーニング娘。大ブレイクのきっかけは後藤真希の加入だといわれています。安室奈美恵もavexに移籍し小室哲哉プロデュースになるまでは一般の人に知られることはありませんでした。

AKB48なら「選抜総選挙」です。テレビで中継されて一気にブレイクしたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

ファーストブレイクを狙おう

時代を味方につけるためのきっかけはほんのちょっとしたことでいいのです。偶然売れてしまう、でも全然構わないでしょう。ちまたで話題になっている、だけでもいいです。あまり大きなことは考えなくても、時代の流れに敏感になって、話題に乗っかれるのなら乗ってみる程度のことでもいいでしょう。

自分の価値を自分で点検しながら、もっと多くの人に自分の価値を認めてもらえるようにするのがプロとしての第一歩です。

ファーストブレイクをつかむために今、なにをしたらいいかを3回にわたって書きました。『スクランブルエッグ』に掲載された後にブレイクしていった人は数多くいます。

編集部ではこれからの芸能界で活躍してくれるみなさんのファーストブレイクのお手伝いを今まで以上にしていきたいと考えています。ですから、資料をひとつでもたくさん作っていろんなオーディションにチャレンジしてください。そして私たちにファーストブレイクのお手伝いをさせてください。

本記事を無断で複製・転載することを禁じます。
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【満足度】 5
【コメント】すごく為になりました。
今、この先どうしようか生き迷っててすごく暗い子になってた気がします。

私はMISIAさんのような人の心を掴んで離さない、色んなメッセージを歌で伝えていけるようなシンガーを目指しています。
正直、ライブやボイストレーニングを始めてから1年経ちますが、なかなか思うように行かなかったり、自分のやりたいこととは別のことが期待されたりして、この世界にはまだ程遠いですが、今の時点でやめてしまおうかとついさっきまで悩み、結論づけようとしていました。
周りは就活の話で盛り上がるし、自分は…。
音楽が好きならそれで食べていくことを考えていくより趣味でやっていた方がずっと良いんじゃないか…と。

けどそれは現実から逃げているだけで、このままじゃどの道に行っても事態は変わらないし、私の人生そんなものか・・となっていくだけだと、このコラムを読んで思いました。
逃げないで、もっともっと努力します。
そのために、自分の気持ちを入れ替えます。

本気で一週間前からやめようか、やめた方がもっと暇も出来て楽しいこといっぱい出来るんじゃないかと考えていた、そんな時このコラムを偶然発見した私の運命にも感謝してこれから頑張ります。

本当にありがとうございました。

【ペンネーム】大学生

■偶然発見していただき、感想までお寄せいただきありがとうございます。自分の意志を貫くのは思ったほど簡単ではないし、これから、もっとたくさんの試練が待っていると思います。でもありきたりな言葉ですが、あなたも私も「一生に一度の人生」しかないので、あとから「あのときああすればよかった」と後悔しないような生き方をしていきたいですよね。そうしていれば失敗は次の成功へ結びつくんじゃないかと私は思っています。(岡田)