「スクランブルエッグ」の取材対象の核となっている各種芸能スクールも、Web化の波は加速度的に進み、現在ではほとんどのスクールがWebサイトを持って運営しています。
しかし、なかには「ただ作っただけ」の状態で1年以上も放置され、ユーザー(ここでは芸能予備軍、業界関係者を指す)にとって何も役に立っていないサイトがあるのも現実です。
そこで、今回のコラムでは、芸能予備軍たちの目線に立ちながら、芸能スクールのWebサイトはどうあるべきかをざっと検証してみたいと思います。
Webサイトを演出するコンテンツ
スクールの案内は、いわば一般企業における「会社案内」「商品説明」にあたります。スクールといえども利潤を生み出す会社組織ですから、各種の費用、レッスン時間などは、具体的な数値情報が必要不可欠です。また、スクール出身者や、イベントの情報も、ユーザーに魅力をアピールする大きな要素になりますから、可能な限り公表するのが望ましいでしょう。
以下、優先順位の高いコンテンツから順にリストアップしてみたいと思います。
(1)必須コンテンツ
- スクールのカリキュラムとそれに対応する入学金、授業料等の提示
- スクールの住所、電話番号、交通アクセス
- 更新情報
いずれも、Web上、というよりは、一般的な社会常識として不可欠なコンテンツであり、逆にこれがはっきりと提示されていないスクールは、スクールとしての機能は果たしていないと解釈されても仕方がないでしょう。
(2)メリットが期待されるコンテンツ
- 出身者の紹介
- 講師の紹介
- 代表者のコメント
スクール出身者はもちろんのこと、講師、代表者(社長、校長など)に関しても、アーチストを育てた実績さえあれば十分に「広告塔」になり得る存在です。
広告としてベストなのが、出身者のナマの声でしょうが、出身者の事務所の方針で掲載できない場合も予想されますので、メインで教えている講師、代表者に関しては、常に芸能界の現状を踏まえたコメントをサイトに掲載できるよう、準備しておくのが得策です。
(3)しっかりとした管理を要するコンテンツ
- 生徒紹介
- 掲示板(BBS)
この2つに共通することは、ただ作りっぱなしでは逆効果をもたらす場合があることです。生徒紹介は、コンテンツの中でも資料的価値が最も高いものですが、もし、何らかの事情で退校した生徒の情報は、すみやかに削除しないと、その人が別ルートでデビューしたときに、肖像権などのトラブルの原因にもなってしまいます。
また、情報交換の場としての価値が高い掲示板につきましても、プライバシーの侵害に関わる情報の書き込みや、「荒らし」の存在を放置すると、ユーザーに悪い印象を与えるだけではなく、生徒間、生徒と講師との信頼関係を損なうことにもなります。
いずれにしても、管理さえしっかりすれば、他のスクールとの差別化には非常に有用なコンテンツですから、Webサイト作成経験のある人をスタッフにつけたり、外部の業者に委ねたりしてチャレンジしてほしいものです。
Webサイトの検証
それでは、私が恒常的にチェックしているスクールのサイトを、いくつか実際に検証してみましょう。
(アイウエオ順、《》内は所在地)
・アイズボーカルスクール《名古屋》
URI: http://homepage2.nifty.com/Ays/
ここの特徴は何といっても掲示板の充実ぶりです。生徒、スタッフ、あるいは外部の訪問者の方からの書き込みが多く、更新が途絶えることはありません。
昨年の取材記事でも書いたように、生徒と講師との年齢差が少なく、双方のインターネット環境がそれなりに揃っていることがプラスに作用している気がします。年2回の発表会関係の記事、出身者、地元で活動している生徒の記事などの充実を望みたいところです。
・アクターズスクール広島《広島》
URI: http://www.tss-tv.co.jp/actors/
放送局(テレビ新広島)がバックアップしているスクールだけに、サイトの作りも放送の番組案内を思わせます。
ここの目玉は年2回行なわれる発表会の詳細記事。掲載を始めたのは昨年からのようですが、出場者名はもちろんのこと、選曲、ステージの写真まで細かく掲載されており、発表会などの、生徒がレッスンの成果を披露する場を重視する姿勢が表れていて、とても好感が持てました。
・キャレスボーカル&ダンススクール《大阪》
アーチストのオフィシャルサイトを思わせる派手な作りです。
生徒はほぼ全員をプロフィール入りで紹介。イベント情報も充実しており、主力となる小・中学生の芸能予備軍へのアピール度は全国でも1・2位を争うかもしれません。
さらに、精鋭を集めた「SPECIAL9」のコーナーでは掲示板もスタート。携帯から発信される生徒たちのナマの発言も見られるようになりました。Lead、BOYSTYLE、dream新メンバーなどを輩出し、業界内では台風の目と言われているキャレスですが、サイトの動きにも目が離せないところです。
・NEXT DNA《東京》
URI: http://nextdna.net/
トップページ自体にはあまり派手さはありませんが、必要なコンテンツはほぼ網羅しており、サイトの作りにはムダがありません。
元々「インターネットレーベル」として立ち上げ、生徒もサイト内に絞って募集しているためが、スタッフはもちろん、生徒サイドもWebサイトのメリットを最大限に生かしている感じです。掲示板も、ライブに関連する書き込みが中心で、落ち着きが感じられます。
・平尾昌晃ミュージックスクール《東京》
URI: http://www.web-i.tv/hirao/
平尾昌晃音楽事務所の1コンテンツとして存在。昨年秋より、サイト製作を外部の業者に委託した結果、従来よりも格段に見やすくなり、情報量も飛躍的に増加しました。
なかでも圧巻なのは、出身者全員のリストを載せたコンテンツで、その顔ぶれを見ると、改めて創立30年の歴史の重みを感じてしまいます。唯一、デザイン上の問題か、バックが暗くて文字が見にくい箇所があるのが気になりました。
今回取り上げたスクールは、いずれも先に挙げた必須要項はおおむねクリアーしています。もちろん、他にも優秀なサイト作りをしているスクールはたくさんありますので、これからレッスンを受けようと考えている人は、所在地、ジャンルで検索してみて、自分にフィットした場所をさがしてください。
なお「アクターズスクール広島」「キャレスボーカル&ダンススクール」は未取材ですが、サイトを拝見してとても魅力的に感じました。機会があれば取材にうかがいたいものです。