「川嶋あい vs I WiSH」以来、久しぶりの選曲講座となる今回のコラムは、単行本「スクランブルエッグのコラムを持って街に出よう」のなかで、書き下ろし記事として発表した「中島美嘉選曲講座」のPart2をお送りしましょう。
中島美嘉2003年の新たな展開
単行本の記事内で、中島美嘉が、どうして芸能予備軍の支持を集めているかについて、筆者(私)は、その理由を次の3点に要約しました。
- 歌わずにはいられない楽曲
- 飾らないキャラクター
- デビューまでの経緯へのリスペクト
このうち、1.の楽曲面については、かねてから言われてきた「実験作」と「勝負作」の区分けが、2003年になってより鮮明になってきました。
ここでいう「実験作」とは、ヒットチャート狙いよりも、スタッフの思い描いているアーチスト像構築のテストをするための作品、「勝負作」とは、ヒットチャートの上位を狙うべく、リリース時期(季節)、タイアップ、購買層などを計算して世に出される作品を指しますが、具体的に彼女のこれまでのシングル曲にあてはめると、
実験作タイプ:「CRESCENT MOON」「Helpless Rain」「Love Addict」「接吻」etc
勝負作タイプ:「STARS」「WILL」「愛してる」「雪の華」
という区分けになりましょうか。
これは、純粋なシンガー・ソングライターではない彼女にとっては、毎回勝負作タイプ(=ヒットチャート狙い)の曲をリリースして、他アーチストとの消耗戦に出るよりは、実験作をはさむことによって、中島美嘉固有の世界を広げ、アーチスト寿命を長くしようという戦略に出ているものと思われます。
オーディション「勝負作」のアドバイス
ところで、オーディションで歌われる彼女の曲は、ほとんどが「勝負作」です。
一般論として、「実験作」は、そのアーチスト本位で作られ、他者の侵入を許さない曲ですから、どんなに歌いやすくても、オーディションの場ではプラスになるとは思えません。
特に、彼女の場合は、作品の持つシャープな雰囲気が顕著に出るタイプですから、よほど「アーチスト・中島美嘉」に惚れ込んでいる人でない限り、上記の4曲に絞って「勝負」するのが正解のように思えます。
単行本と重複する部分もあるかとは思いますが、4曲に関する選曲のアドバイスをまとめてみましたので、参考にしてみてください。
曲目 | オーディション適性 | ワンポイントアドバイス | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 志望 | ||||||
~15 | 16~19 | 20~ | 歌手 | 女優 | タレント | ||
STARS | ◎ | ◎ | △ | ○ | ◎ | ◎ | サビに入るまでは、歌詞を噛み締める感じで歌うのがコツ。「熱唱」はしないよう、クールな気持ちで臨みたい。 |
WILL | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | 年齢、志望は問わないが、強いて言えば、女優を目指す人向きの曲。歌いだしと転調部分でコケないよう注意。 |
愛してる | △ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | △ | 年相応の色気が必要。衣装、髪型で大人っぽさをアピールするのも手。ファルセットの濫用は禁物。 |
雪の華 | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | 彼女の曲の中でも、最もカワイらしさを出せる曲。大人の女性も、子供の頃の気持ちを思い出すように歌おう。 |
※オーディション適性 ◎:最適 ○:問題なし △:少々難あり
おわりに
「雪の華」という後世に残る名曲が評価された中島美嘉。2004年は、いよいよ「歌姫の頂点へ」との声も聞こえてきました。
当初は白い目で見られていた「飾らないキャラクター」もだいぶプラスに転化したようです。同世代の芸能予備軍はもちろん、キッズ、ジュニア世代の予備軍からも「憧れの女性」として、目標にされることを期待しています。