2003年の幕が開けました。新年早々から、藤本美貴のモー娘。入りという衝撃的なニュースが飛び込み、関連のコラム記事(選曲講座・下克上絵巻)のアクセス数が記録的な伸びを見せるなど、編集部周辺でも大騒ぎになりました。モー娘。ハロプロ周辺は今後も大波乱が予測されていますので、ある程度落ち着いたところでコメントしてみたいと思います。
新年第1弾のコラムは、昨年大ヒットし、紅白歌合戦で歌われた楽曲を3曲取り上げてみましょう。
(1) 中島みゆき「地上の星」
紅白出場を機に、リリースから約2年半をかけてオリコン1位を獲得したという、今最も話題になっている楽曲の1つですが、不思議とオーディション、発表会、カラオケ大会の場では思ったよりも歌われていません。
これは、芸能界を目指す層、それを指導する層ともに「プロジェクトX」への関心が比較的薄かったことが原因ではないかと思われます。中島みゆき自体は「時代」「悪女」など昔の歌はコンスタントに歌われていますので、「地上の星」がいかに音楽ファン以外の層(=CDをほとんど購入していなかった層)から支持を受けたかを物語っているようです。
今後は、人気を受けて20代の女性を中心に歌われる事例が増えるかもしれません。90年代の彼女のヒット曲と比較して、音域は狭く、いわゆる「みゆき節」も控えめになっていますから、自分なりの色をつけやすい点からは有利な気がします。オジサン達を思わず唸らせる歌唱の出現に期待します。
→オススメ度★★★★
(2) 夏川りみ「涙そうそう」
「沖縄のメロディと自然を素直に歌謡曲化した逸品」というのが、この曲に対する私のイメージです。
発表会、オーディションで何回か聴いていますが、歌手志望の人よりも、女優、タレント志望の人のほうがこの曲の優しさを表現できているように思えました。熱唱タイプの曲ではありませんので、衣装面で、ナチュラルな服装を心がけたり、飾り物を身にまとわないようにすれば成功するでしょう。ミスコン審査などで歌唱を求められたときには、ぜひトライしてみてください。
→オススメ度★★★(ミスコンでは★★★★)
(3) 平井堅「大きな古時計」
もともと小・中学校の音楽の教科書にも採用されていますので、学校の授業で親しんだ人も多いはずです。
楽曲的には決して難しい曲ではありませんが、流行歌として世間に認知されたわけですから、もはやどんなに上手く歌っても平井堅と比較されることは明白です。
成年男性の場合は、よほど自分の世界を持って歌わないと「他に歌う曲はなかったのですか」と審査員からキツイ突っ込みを受けますから、ほとぼりが冷めるまで選曲を避けたほうが賢明でしょう。
むしろオススメなのは、この曲を現役で習っているジュニア世代(男、女問わず)。まだ色づけがされていない分、審査員もむやみに平井堅との比較をせずに済み、好感度を与えられそうな気がします。とくにボーイソプラノの男子は挑戦してみてはいかがでしょうか。
→オススメ度★★(ジュニア世代は★★★★)
この3曲の共通点は、アーチストパワーを上回る社会現象を引き起こしたことによって、アーチスト自身が予想もしなかった年齢層に広くアピールしたということでしょう。それは「演歌」に代わる日本人にとってのスタンダードナンバーの到来を予感させるできごとでもあります。
ハロプロのメンバーや、パンク系のバンドさえもシングル・アルバムで昭和時代の楽曲を積極的に取り上げている時代です。上記のような「オジサン受け」する曲をマスターし、オーディションで披露することは決してマイナスにはならないと思われます。
2003年も、芸能予備軍たちの健闘を祈ります。