2009年10月30日から11月8日までシアターGロッソで行われているAKB48初のミュージカル『AKB歌劇団 ∞・Infinity』の記者会見の様子を詳しくお届けします。(2009年10月29日 シアターGロッソ)
主役の村雨ルカ役を秋元才加、宮澤佐江のダブルキャスト、ヒロインの高島麻里亜を高橋みなみ、柏木由紀がダブルキャストで担当、そしてAKB48のメンバー10名(中田ちさと、佐藤夏希、片山陽加、田名部生来、中塚智実、仲谷明香、米沢瑠美、岩佐美咲、内田眞由美、野中美郷)が初のミュージカルに挑戦しています。構成・台本・演出は「サクラ大戦」などで知られる広井王子氏。この日、秋元才加・高橋みなみのキャストで通しリハーサルが行われた後に会見が行われました。
広井王子(構成・台本・演出)「昨年のちょうど今ごろ、秋元康さんから『AKB歌劇団やってよ』と言われ、『はい』と言ってどうしようかと放っておいたら、春ぐらいに『どうなってる?』と電話がかかってきまして、すぐに劇場に見に行きました。なめてかかっていたので、ちょっと驚きました。熱量というか、昔見た、赤テントの唐十郎さんのところの熱意を持っていて、『あ、アングラかぁ。すげーなぁ』って思って。
自分のテイストなのでやってみたいなと思って、そこから何度か見せてもらって、まず歌劇団は男役トップができないと決まらないので、まず秋元才加を選抜しまして、彼女の中にあるのは本当に女っぽい女ですけども、出てくるものがとっても男役な感じがしたんですね。もしかしたら本当にダイヤモンドかもしれないと思って、『どうしても秋元をください』と言ってそのあとに宮澤を紹介されて。これがタイプが違うんですよね。
それから娘役トップ2人を選びまして、かわいらしい感じと清楚な感じを組み合わせまして、ダブルキャストとなりました。
『君はペガサス』がキー曲
脚本を作るときに、毎週毎週(AKBの)CDが送られてくるんですね。『どうしよう』と思ってずっと聞き続けて200曲ぐらい聞いて、どうせやるなら『マンマ・ミーア』のABBAみたいに全曲やってみたかったので、今回それにチャレンジしようと思って、苦労しましたけど面白かったです。
キーになった曲は『君はペガサス』なんですけど、これをキーにして物語をふくらませて、『MARIA』という曲を見つけて、“麻里亜”という役をつけたら歌えると思って組み合わせていって、シナリオをつないでいく方法にしました。接着剤となるミュージカルっぽい曲がなかったので、それだけは作らせてくださいということで、『Infinity』という曲を作りました。
で、稽古期間が15日ぐらいしかなかったんですよ。そういうスケジュール表が来たときに『ナメとるのか!』と(笑)。正直はじめ投げましたからね(笑)。稽古期間1週間ぐらいしたときですかね、そのとき秋元が泣き崩れまして、一歩も動けない。役が入って自分がどうしていいかわからない。こういう状況が起きるのね。これは本物になることです。今まで動けてたのが動けない。ここで『あっ、この子本物』。
で面白いことに宮澤君は毎日芝居が違う。これがまたみずみずしい。演出の指示を超えていくんです。『なんだろうこれ』って。『そうか!』って。演出方法を全部変えて。
宮澤・柏木のほうは少年愛なんですね。今日(秋元・高橋)は少し大人の愛で、シナリオは一切変えてないです。宮澤のほうはみずみずしいちょっとキュンとする切ない芝居になっていて、二つ見ると『全然違うんだ』って見られると思います。
稽古期間の15日間、本当に、イベントやライブや仕事があったろうに、『君たち稽古してきたね』っていうぐらいセリフがすーっと入ってるんです。変わってきたのがすごく面白くて、10月15日から本気になりました。
その気になるといろんなことを教えながら本当に彼女たちはよく頑張ったと思います。それだけはほめてあげたいと思います」
メンバーからの意気込み
秋元才加「今回初めてミュージカルに挑戦させていただくということで、一からたくさんのスタッフさんに支えていただいて、毎日稽古が楽しかったです。AKBの曲でも男役やかっこいい役をやらせていただくことが多かったんですけども、その経験もあり、また男役として演じることができて自分の新たな魅力の一つを見つけていただいて本当にうれしいと思っております」
高橋みなみ「ミュージカル初挑戦ということで楽しいこと勉強になったことたくさんあったんですけども、自分の恋愛の経験上、麻里亜役になるのにまだまだのことがたくさんあったんですけど、ルカの秋元才加ちゃんを本当に好きになりかけたというか(笑)、本当に素敵だなと思って日々レッスンしてまいりました。女の子の気持ちというのも、この役を通じてたくさん学ぶこともできました」
宮澤佐江「お稽古のときは、私は考えれば考えるほど、ツボにはまって底まで落ちてしまうタイプなので、なるべく何も考えないようにしていまして。あ、考えたんですけど(笑)なるべく表面に出ないように演じてました。さきほど秋元才加ちゃんたちの通しリハを一人のお客さんとして、自分と同じセリフや曲を言っているんですけど、一切口ずさまないようにして見させてもらって、すごく鳥肌が立ちまして正直焦りました。さきほど二人からいただいた刺激をこの場所で見せたいという願望でいっぱいです」
柏木由紀「演技自体もほとんどやったことがなくて、最初、不安のみが私の中にあったんですけど、稽古していくうちに不安よりも、もっとこうしたいな、とか、こうしたらもっと良くなるのかなという考えが自分の中に出てきたことにびっくりしていて、まだちょっと不安はあるんですけど、初日が楽しみになってきて、ミュージカルを見に来てくださった方に『楽しかった、来て良かった』って思っていただけるように、それだけを考えてやっていきたいと思います」
注目のキスシーンについて
――ファンの目線からすると見どころの一つはキスシーンかなと思うんですけど、練習や本番でキスシーンを演じるのはどういう気持ちなのかを聞かせてください。
秋元才加「AKB歌劇団ということで、歌劇団の演じ手としてしっかり真剣にやりたいというところがあって、『アイドルだからできない』というのを抜きにして、台本にキスって書いてあったらちゃんとしようね、って高橋みなみちゃんと決めていたので、そこは男役、女役としてちゃんとしました」
高橋みなみ「キスシーンはやはりドキドキしますし、才加は女の子なんですけど、役に入ってると女の子に思えなくて、本当に素敵な男性として胸弾むといいますか、ドキドキしました。稽古のときは親指を(唇に)立ててするんですけど、ある日突如(キスを)本当にしてきたんですよ」
――宮澤さんと柏木さんのときにもキスシーンは見られるんですか?
宮澤佐江「見られるんですけど、少年のルカというのもあるので、(秋元・高橋の)2人のような……」
秋元才加「濃厚な」(一同笑い)
広井王子「こっちのが回数が少ないです」
宮澤佐江「キスという言葉を発するのが今は恥ずかしいです。女になってしまうというか素になってしまうというか。ちょうど1年前にドラマで一度経験させていただいたことがあったので(インタビュー参照)、それが心強かった部分はありましたが、そのときは(相手は)男の子でしたが、今回はゆきりんということで、まぁあの~、『いただきまゆゆ』という感じで(笑)」
柏木由紀「宮澤佐江ちゃんのルカは少年ルカなので、純粋な瞳の男の子なんですよ。その瞳に吸いつけられるようになって恥ずかしいんです」
広井王子「稽古場で教えたのはよくあるパターンなんですけど、親指が入るんです。ずっとそうしてたんです。ある日見てたら本当にキスをしてる。『それ本番でもやるつもりですか?』と言ったら『そうです』と。あの、僕がやれと言ったわけではないので(笑)」
――広井さんにお聞きしますが、メインキャスト以外にAKB48のメンバーから10人が出られていますが、その方たちは広井さんが選抜されたんですか?
広井王子「スケジュールとかいろいろあって、(AKBのサイドで選んで)いただきました。稽古場で見てこの子はこの役にしようと決めました。たぶん全員ほとんどいろんな役を一通りやらせておいて、稽古場で決めていったんですね。決まるまで彼女たちは実はいろんな役をやってるんです。彼女たちもよく頑張りました」
――キスシーンをする前に歯みがきなど気をつけてることはありますか?
秋元才加「なんだっけ、ミンティア。さわやかなキスのために」
高橋みなみ「ちょっと待って。今日も食べてたの?」
秋元才加「食べてた」
高橋みなみ「やっぱり(笑)」
秋元才加「あとは理想のキスを瞑想してます。『こうしてもらいたい』というのを瞑想して気をつけてます」
高橋みなみ「唇がかさついていると相手に思われるのがいやなので、あんまり塗らないんですけど、リップを塗って」
秋元才加「あっ。乾燥は気をつけたほうがいいです」
高橋みなみ「あとはどういう風に見られるときれいなのかを気にしていました」
宮澤佐江「ミンティアやリップは当たり前ですよね(笑)。演技上では少年という気持ちはいつも持っているので、熱いキスは違うって感じなので、ふふっていう感じ?」
広井王子「なんだそれ。そんな芝居教えてないだろ(笑)」
宮澤佐江「音が鳴るなら“ふふっ”っていう感じでさせていただいてます」
柏木由紀「私は見てくださる女性の方が『あの麻里亜役やりたい』って思ってもらえるようなキュンとする感じのができればいいなと思います」
――ソロで歌うシーンがそれぞれありますが、歌ってみてどうですか?
秋元才加「緊張します。AKB48も最終的にはみんな実力をつけて卒業していくというところで、一人一人歌わせていただくことですごく勉強になることがたくさんあるので、いい経験をさせていただいてるなと思います」
高橋みなみ「AKB48は人数も多いですし、歌うパートも分かれているので、1曲を通して歌うことはなかなかないので、こういう広い場所で一人で歌うことは本当に度胸が要るというか、やってみないとわからないことが歌劇団を通してわかりました」
宮澤佐江「一人で歌わせてもらうことはすごくうれしいし気持ちがいいんですけど、今回私にとっては歌がいちばん難しくって、もともとの声が高かったりするので、そのまま歌ってはいけないという自分の気持ちがあって、いつもとは違う感じで歌うように心がけているので、そこは見どころのひとつでもあるのかなと思います」
柏木由紀「緊張しますけど一人で歌えると最初から歌詞を伝えることができるので、伝えようという気持ちで頑張ってます」
AKB48の魅力
――広井さんにお聞きしますが、AKB歌劇団の第2弾というのは頭の中にあるのでしょうか。
広井王子「あります。やらせてもらえるなら」
――どんなことを考えていらっしゃいますか。
広井王子「オリオン座流星群。もしやらせてもらえるなら星になった少年の話を。この歌劇団には伝説や神話やファンタジーのようなものが似合ってるんだろうと思ってます。座付きにさえていただけるなら本を書きます」
――広井さんから見たAKB48の魅力を。
広井王子「これはね、ガッツ! 本当に。芝居やりたいって子はいっぱいいるの。どこにでもいるの。でもみんな寝るの。遊びに行くの。ご飯も食べるの。この子たち稽古場で寝てない。それだけセリフをちゃんと入れてきてちゃんと稽古場で立ってて、OKと言うまで絶対に稽古場から出ない。人の芝居を見ている。これは基礎ができてる。それは板(※舞台のこと)の上に毎日立ってるから。その板が育てた。他の人たちは小劇場で毎日板の上に立つことはできない。この人たちは本当にお客さんに育てられてる。そういういい素材だからもっともっとお稽古をしたりだとか、セリフを言ったりだとか、そういう風にしていくといいなと思っています」
ダブルキャストそれぞれに魅力があって、広井王子さんがおっしゃるコメントも昔から彼女たちを見ているファンにとってはとても理解していただけたようで会見を聞いててうれしくなりました。(撮影・取材 岡田)