2008年3月1日、AKB48チームBは3rdステージ『パジャマドライブ』公演をスタートさせました。
チームBの初日
2007年4月8日からの1stステージ『青春ガールズ』はチームK公演の再演、2007年10月7日からの2ndステージ『会いたかった』はチームA公演の再演と、“再演”が続きましたが、今回の公演はチームBのために作られた初のオリジナル公演となります。
公演料金もひまわり組と同じく3,000円(一般男性。以前は2,000円)となり、さらに公演を見るために“並ぶ”という選択肢がなくなり、完全にメール応募での抽選による観覧方式となりました。
紅白以降、明らかに劇場での客層が広がり、入れ替わってきたのに加え、メール抽選となったことで、常連のファンにとっては通いづらくなったものの、こういう日はいつかは来るので、ある程度覚悟しなければならないでしょう。これもAKB48が大きくなっていく道筋のひとつと言えるのではないでしょうか。
チームBは先輩の過去の公演の再演の中で、基本的なステージ技術、MCの話の進め方、お客さんのつかまえ方などを学びつつ、オリジナルなキャラを見いだし、歌詞や振り付け、ステージ構成を今回のオリジナル公演に反映するために、なんと約11ヵ月もの時間をかけてようやく本当の「初日」を迎えることになったのです。
80年代アイドルポップスが目白押し
AKB48劇場でのステージ編成は、チームA 2nd Stageを除き、[全員曲のブロック]~[ユニット曲のブロック]~[全員曲のブロック]~[アンコール]となっています。この出演編成は全員を、そして個人を見るためには都合が良く、見せ場の作り方もパターンはありつつもバリエーションを持てるので、当分の間、変わることがないように思われます。
『パジャマドライブ』公演の1曲目はなんと、「初日」。「初日」のステージが始まるまさにその時間からまるでリアルタイムのように進行していきます。チームK 3rd『脳内パラダイス』の1曲目「友よ」のバンド演奏と同じように軽く驚かされます。
そして、次から次へと繰り出す80年代風の楽曲群。まさにチームBのカラーを象徴するような、なつかしくもかわいい曲のオンパレードでした。
今回、楽曲の核となっているのが80年代のアイドルポップスなので、オールドファンにとってはとても心地良い楽曲構成となっています。早見優、うしろゆびさされ組からサザンオールスターズ、90年代の東京パフォーマンスドールまで、かなりいろんな連想をさせる曲が揃っていて、一度聴いたら忘れられないメロディーで、昔と今を同時に楽しめるような、チームA 1st Stage『PARTYが始まるよ』公演を洗練、進化させ、今まで完成度がいちばん高いと言われていたチームK 3rd Stage『脳内パラダイス』公演をも追い抜いていきそうな勢いです。
成長していく姿を応援
チームAとチームKが「ひまわり組」となり、楽曲群が“今風”になり、ステージとしての完成度を高めすぎたことや、出演者が日替わりになったことで、“成長していく姿を応援していく”ことが事実上難しくなった一方で、チームBは約11ヵ月、甘えん坊の末っ子と言われつつも地道にキャラクターを確立し、「成長の度合い」を間近で感じることができたことが、今回の公演に結びついているのでしょう。
もちろん、制作側も「ひまわり組」による問題点には気づきつつも、劇場外のスケジュールと劇場公演の維持を両立させるためにはこうせざるをえなかったのでしょう。そのため、気づいたらチームBのオリジナル公演がダントツに面白いものになったというわけです。
それで大変なのは「ひまわり組」側に。以前からのファンの流れとしては、入門編としてチケットの取りやすい後発のチームを見てから先発のチームを見ることが多かったようですが、最近ではチケットが完全抽選になったこともあり、「ひまわり組」が入門編となっているようです。メディアに出ているメンバーの構成からして当然のことでしょうが、初心者は満足させられても常連としては「応援する醍醐味」を考えると今は「B」になびいているかもしれません。
そのような危機感を「ひまわり組」メンバーも感じているようでしたが、研究生のチームA、チームK加入もあって、ようやくチームAの公演、チームKの公演という従来の形になっていくことが発表されました。
ワッショイB!
それにしてもアンコール1曲目の「ワッショイB!」には驚かされます。チームAには「AKB48」が、チームKには「転がる石になれ」があるように、それぞれのチームカラーが伝わるものをと「ワッショイB!」が出来たのだと思われますが、歌詞にメンバー全員のニックネームをつけるとは「会員番号の歌」(おニャン子クラブ)みたいだとつぶやいたオールドファンは数知れず。
この曲の歌詞にあるようにチームBは知らないうちに「最強チーム」になってしまったようです。華やかさ、貪欲さ、力強さが足りないと先輩チームと比較され、つらい面もあったでしょうが、ようやく自分たちに合った曲をもらい、さらに成長していく余地がたくさん用意されているので、きっともっと伸びていくことでしょう。なかなか感動ものでした。
まだ見てない方は根気よくメールで応募してご覧になってください。
「桜の花びらたち2008」
AKB48は2006年、2007年、2008年と三度目の春を迎えました。春には毎年さまざまなドラマを生んできましたが、2008年はシングル「桜の花びらたち2008」の特典にからんでちょっとした騒動が起きました。
要するに、特典のために多大な金銭が必要となるような企画がファンならずネット上で批判され、独占禁止法上の不公正な取引に抵触する恐れがあるとのことで中止になったというものです。
大昔からグループアイドルものにはこのような「多大な出費」はつきものですが、インターネットという媒体を巻き込んで大騒動になったというのもまた、ひとつの新しい時代を象徴するかのようです。
そのせいか、「桜の花びらたち2008」の話題も売り上げも伸び悩んだ印象でした。ただ、これを契機に見直さなければいけない部分が見えてきたと前向きに考える一方で、レコード会社のお家事情から、売り上げを減らさないための次の一手を考えなければいけないのかもしれません。
幸い?なことに、失言や騒動が話題になって、少しずつ一般的に浸透していくという流れは、長い目で見ると過去の経験から見ていい方向に向かっているのではないかと個人的には楽観視しています。
劇場でメンバーが発するメッセージ
私は、2006年11月のコラム「初のホールコンサート」で、
AKB48がAKB48として存在し続けられるのは、“会いにいけるアイドル”というコンセプトの継続、完成度の高い楽曲群、ファンの声に耳を傾け続けること、の3つ
と述べ、2007年10月「ひまわり組公演とチームB 1stステージ」では
味方を増やすためにすべきことは(1)公演を充実させる (2)スターを輩出する (3)心を熱く駆り立てる何かを持ち続ける
と述べました。その考えは今も変わっていません。
ただ、状況として、メール抽選方式で「会いたいときに会えない」状態になったため、多少の変化が起きていることは否めません。
劇場側も1日3回公演対応などをしていますが、常連の一部は、「もっと会いやすいアイドル」に流れているのも事実ですし、一方でキャンセル待ちのためにかえって公演開始前の劇場がとても混雑している現象が続いています。
とはいえ、新しく見たい人が劇場に行きやすくなったことも事実です。いつも同じお客さんが同じ場所にいるようなことがなくなり、日によって劇場の雰囲気が違うので、メンバーにとってはいつも新鮮な気持ちでいられるのではないでしょうか。
私が最近の公演で気になっていることは、ひまわり組のトークのコーナーの内容がちょっとファンに近づきすぎているのではないかということです。
ファン側としては、アイドルと目が合ってニコッとされたらうれしいに決まっています。それは昔も今もそうです。アイドルはファンに笑顔をふりまいて元気をあげるのが仕事ですから、自分のファンを増やすためにも当然、そういった行動をします。
そこまでは何も問題はないんですが、トークのコーナーで言葉にするのはどうなんだろう、と個人的には思います。「目が合ったらあなたのことを好きだと思ってくれていいです」とか、「何度も目が合った気がしたけど、これって噂の脳内?」とか、トークのネタとしては大変面白いのですが、「ファン心理をわかったうえで、それに応えようとして言葉が過ぎて興ざめしてしまう」ことが何度かありました。
また、「昔自分のことを○○と言ってたけど、(今となっては)それは間違いでした」といった発言も気になります。それはぶりっ子してたことが恥ずかしくて照れ隠しにそう言ったに違いないのですが、「そのときのその子を応援してたファンの気持ちはどうなの? それも間違いだったの?」と問いただしたくもなってしまうんですね。
いずれも気にすることもないのかもしれませんが、インターネットでファンの本音を知ろうと思えば知れる時代ですから、それに応えようとするあまり、「アイドルとしての神秘性」まで壊す必要がないように個人的には感じています。
アイドルは自分の夢をかなえるために何をすべきか、そのためにファンはどうすればいいのか、ということを悩み、自問自答しながらスタッフも一緒になって前へ進んでいくという形が専用劇場ならではの理想の発展の仕方だとは思うので、初心を忘れずに明日のステージに向かって頑張ってもらいたいものです。
現在の「ひまわり組」公演はまもなく終了し、チームAの4th Stage『ただいま恋愛中』リバイバル公演が2008年4月20日から始まります。チームK 4th Stageもオリジナル公演として準備中とのことです。現在「最強」チームBの勢いに負けないエネルギーを持ったステージができるのはチームAなのかチームKなのか、夏にかけてまた面白い公演にめぐりあえそうです。