2006年4月15日、AKB48(エーケービー・フォーティーエイト)のAチームは曲目をガラリと変えた新バージョンによるセカンドシーズンを迎えました。そして、フジテレビのイベント『お台場学園2006~文化祭~』のイメージソングとして「スカート、ひらり」が決定したことにより、テレビで彼女たちの姿を見る機会が増えることになりました。
相変わらずAKB48について関係者によく質問されるので、口頭では伝えきれない私なりの答え方を残したくなりました。ですので、またもやAKB48ネタです。
私の一連のコラムでは“評論”や“批評”をするつもりはなく、基本的には現状の報告と私なりの受け止め方を示し、最終的な判断は読者に委ねるつもりで書いています。対象にしている想定読者層は30代以上の業界関係者(そして“通”なマニア)です。場合によってはスタッフ、そして応援してくださっている方やメンバー自身のことも考えていますが、基本的にオールドな(中年世代の)アイドルファンのつぶやき程度に思っていただければ結構です。
会いたかった
4月15日からのAチームの新しいバージョンは「夏」を強く意識したもので、衣装も原色が多く、肌の露出も今までよりもかなり多く、華やかさが増した構成になっています。
そして、なんといっても今回は、前バージョンのステージでの人気や実力、本人の適性などがはっきり反映されたものになっていると感じました。
たとえば、篠田麻里子、増山加弥乃のポジションは明らかに上がっているし、中西里菜、板野友美、峯岸みなみらのステージでの人気や本人たちの努力がキャスティングに反映されています。“お~いぇ”こと大江朝美の際立ったトークの面白さも生かされています。
一方で、ステージ上での変化、成長度、ファンの人気がいまひとつ伸び悩んでいるメンバーは、言葉はあまり良くないですが“降格”とも受け取れるものでした。それは香盤表(進行に合わせた楽曲と出演者の一覧表)を比較すればはっきりわかると思います。現実は厳しいものです。本当の芸能界はもっと厳しいのでこのぐらいのことでへこんでばかりもいられません。
応援している方々のblogを読んでみればわかりますが、実にいろんな感想があります。私も初めて見たときのごくごく私的な第一印象だけ残しておきます。
・お目当ての子の立ち位置がまんべんなく散ってしまったため、どのポジションで見ても満足できない!
・この子たちはこれからきっとなんでもやっていける、という確信めいたものを感じた
以上の2点です。あとは……隣で見てた宇佐美友紀ちゃんが終わった直後、感動して「一番前で観たい!」って言ってました。「98回ステージに立って、この日(4/17)99回目だから、あと1回見れば好きな場所で見れますって」……とかいうしゃれた返事ができなかったのが残念です(苦笑)。意味不明でしょうが一応ファンサービスってことで。
80年代アイドルポップスの逆襲
今回のバージョンの合言葉は「会いたかった!」だそうです。『AKB48』(1stシーズンのアンコール曲の1曲目)と同様、彼女らの等身大に近い歌詞で観客に訴える、なかなか良い曲です。
今回、夏を意識しているというのもありますが、もう一つ、より明確なのは音楽が80年代のアイドルポップスをより強く意識しているということです。そして、オールドファンな私は10年以上も昔、毎日のように見ていた“東京パフォーマンスドール”も含め、80年代のいろんな楽曲と比較したくなってしまうのです。
Winkとしか思えない振り付けがあったり、『そんなヒロシに騙されて』『うる星やつら』モータウンサウンドを意識させる曲があったり、『ビバ!ケセラセラ』『Oh! Mambo』(TPD)と全く同じ足のステップがあったり……「もう助けて」って感じで脳髄がやられてしまいそう……。
しかも、制服姿で出てくる本編最後から1曲前の『だけど・・・』や、アンコール1曲目『未来の扉』はメロディーも80年代風でしびれますが、歌詞がとんでもなく切なくて、聞いてるだけで涙が出そうなくらい。
……そういう風に思っているのは40代以上の人だけなのかもしれませんが、楽曲の完成度はただごとではないです。特に『だけど・・・』『未来の扉』にいたっては“長生きはしてみるもんだ”としみじみと感じたほど(苦笑)。
この2曲が持っている深い意味をメンバーたちは本当にわかって歌っているのだろうか、と気になったりもしますが、世代を超えた人それぞれの受け止め方ができるのが音楽というものですから、音楽はすばらしいものだと再認識させられました。
ですので、私がAKB48にはまる本質は“楽曲”なんだということが私自身、よくわかりました。
“今日のお題”でキャラクターが決まる
私はAKB48の楽曲にはまりつつ、もちろんアイドルとしての資質や将来性をついつい冷静に見ようとしますが、Aチームに関して言うなら、切磋琢磨していけば当面、人気は保てるでしょうし、メンバーチェンジをしないのならそれぞれがそれぞれのポジションを確保できるように感じます。
一方、Kチームに関しては、後から入ってきたことや、人気がなかなか上がってこれないこと、そろそろ楽曲のバージョンがお客さんに飽きられてきていることなどから、浮上のきっかけが見えづらい状況といえるかもしれません。
とはいえ、スタッフのKENのようにAよりはKに行くタイプもたくさんいますからKチームはKチームなりの魅力はあるのだと思います。
私がKチームを何回か見て思うことは、必死すぎるところが気になることや、あまりに“なんでもあり”的な子を集めてしまったため、ユニットとしてのまとまりがないのです。もともと後から入ったKチームだけで公演をすることを考えてオーディションを合格させたとも考えられないので仕方ないことですが、数字(観客動員数)はシビアなものです。
ただ、Kチームのステージで発見することは、トークコーナーの「今日のお題」のところで、見るたびにそれぞれのキャラクターがはっきりわかってくるところでしょうか。
Aチームも「今日のお題」で話す内容でファンのみなさんが一喜一憂(“憂”はないかも)しているのをblogで拝見しましたが、正直、私はAチームの「今日のお題」にはそれほど興味がありませんでした。もちろんこれで大江朝美の面白さを私も知ることができ、スタッフや多くの観客が彼女の“才能”を発掘することができたわけですが。
現状のバージョンでのKチームのトークは私にとってはアイドルの「素の部分」を知るうえでとても楽しいコーナーです。アイドルは歌やダンスじゃなく、とっさの切り返し=アドリブ性とでもいいましょうか、タレント性がいちばん大切だというのがこのコーナーで本当によく分かります。
テレビ番組で突然司会の人や芸人さんに妙な振りをされたときにどう切り返すか――タレントはこの瞬発力が常に問われているのです。それをこの段階からやらせてもらえてるわけですからAKB48は幸せものです。
「好き」と言うことの大切さ
2006年5月12日にNHK教育の「一期一会」で中西里菜がクローズアップされていました。初日(厳密にいえばゲネプロ)のステージの自己紹介で「大分出身の17歳」と聞いたとき、絶対学校は中退してきてるし、それなりの覚悟を持って上京してきたはずと思いました。お客さんへの目線の配り方が以前に出会ったことのある、大分出身の女の子と似てる気がしてならなかったので、初日に頭の中にインプットされました。
「AKB48の穴井夕子」……私は彼女をそう印象づけました。穴井夕子ちゃんといえばプロゴルファーの横田真一さんの奥さんとしてテレビ番組によく出演していますが、彼女も大分から夢を目指して上京し、東京パフォーマンスドールにちょっと後から入って見事フロントメンバーの座を勝ち取った頑張り屋さんです。中西里菜を見るたびに当時の穴井夕子のオーラを思い出すのです。
そうやって昔のグループアイドルと比較をするのは馬鹿げてると思われる方もいらっしゃるでしょうが、歴史は繰り返すのです。しかも、今回は確信犯的に繰り返されているとさえ思ってしまいます。若い方にはわからないことも中年のアイドルファンにはわかるのです(苦笑)。
実は、Kチームで注目してる子がいます。私は「AKB48の仲間由紀恵」とひそかに名づけていますが、今は名前を明かすことはしません。この子がどういう形で花開いてくれるのか本当に楽しみです。こういう楽しみ方もあるんですね。
だんだん、酒場の酔っ払いオヤジのたわごとみたいになってきたのでそろそろ終わりにしようと思いますが、私がこういうコラムを残したいと思ってしまうのは、他のメディアの方々のAKB48の扱い方に若干不満があるからです。
不満というのもおこがましいのですが、当然のことながら秋元康さんがプロデューサーであり、秋葉原で話題になっているアイドルなのでネタとしては非常に面白いし、注目に値するに決まっているわけです。
それをどんな切り口で紹介したらいいのか、というのに編集者やディレクターはメディアなりの独自性を持ちながらやっています。私がここでこうしてやっているように、です。
1回は紹介できるけど、2回以上続けることができるのか、続ける価値があるのか、という問題に直面したとき、何を見なきゃいけないのか、ということなんです。
それは私は「ステージそのもの」以外にはないと思っています。どんなにマスコミが紹介しようが、「ステージそのもの」がダメならこのプロジェクトは終わりだと私は思います。だからメディア関係者の方々は、彼女たちの魅力の本質はどこにあるのかを知るためにはステージを1回だけでなく何回か見てもらいたいな、という気がします。私は2回以上観る価値があると考えますが、それをメディア関係者にどう印象づけるか、というのがスタッフサイドの今後の課題になると思います。
劇場のファンのみなさんも「今日は関係者席が多い」などと嫌味を言わずに、今日もAKB48を応援してくれる味方候補が来てくれてるんだ、ぐらいの太っ腹な気持ちになっていただければと思います。私も正直忙しいんですが、彼女らの変化を確認するためになんとか時間を工面して劇場に足を運んでいます。
『会いたかった』という曲の中に「好きならば 好きだと言おう」というフレーズがありますが、年をとってくるとなかなか自分の素直な気持ちを出しにくくなってくるものです。この曲に限らず、AKB48の歌詞の中には“昔は持っていたのに今は失いかけつつある”大切なものがあり、それをメンバーが自分の言葉と態度で現実にしようとしていて、それを観客が一緒になって応援する、という図式なのだと思っています。
その図式が何かの拍子に崩れてしまうことがないように祈っていますが、明日のことはどうなるかは本当にわからないです。ただ、今、私が業界関係者の方々に言えることは、「AKB48は侮れないぞ!」ということだけです。
えらそうにごめんなさい。劇場でお待ちしております。
【満足度】 3
【コメント】いつも楽しく拝見しています。
本当に「ふんふん」「なるほど」そういうことだよなと感動すら覚えておりますが、今回は、こと僕の好きなKチームのことが出ておりますので、感想と意見など述べさせていただければと思います。
僕はKチームから入った(実はゴールデンウィークのAKBデビューです(汗!))新参者ではありますが、Kチームの魅力はみんなが一生懸命すぎるところ、自分のポジションを打ち出そうと必死なところだと思うのです。
確かにAチームはまとまっています。でも…、と思うのですが、また教えて頂きたい部分でもあるのですが、モー娘。も衰退気味(失礼!)、Berryz工房も今ひとつメジャーになれない現状(失礼・再!)にあって、AKB48の取るべき道はなんでしょうか? Aチーム20人でのデビューでしょうか? 今の流れを見るに、アイドルグループユニットのミリオンセラーは想像しがたいように思います。
Aチームは確かにまとまっています。歌もダンスも上手いです。
かたや、Kチームはバラバラです。歌もダンスも下手でみんな必死なのかもしれません。
でも、僕はお気に入りのメンバーを探すのに目移りして困ってしまいます。
初回は、香菜ちゃんの容姿と丸見えなブルマーに一目ぼれでした。でも2回目は、さ~えの「スカひら」の振り返る時の何ともいえない表情に参ってしまい、3回目はゆかぴょんの底抜けな明るさに惹かれてしまいます。こりんはカワイイし、キュラの優等生的なところも気になるし、めーたん、ともちんの天然な雰囲気も捨てがたい。奥さま、えれぴょんのミクロでカワイイところも気になるし、ノロカヨのほのぼのムードもどんどん自分の中で大きくなる。
きっと次回は新しい魅力に気づいて、違うメンバーを好きになることでしょう。とにかく、みんな好きになっちゃいそうなのです。
Aチームも元々はそうだったと言われればそうなのかもしれませんが、そうだとすれば、Kチームは違う道をたどって欲しいなと思います。
KチームのメンバーはAチームに入る事、勝つことを目標にしている節がありますが、いきなり全国区というデビューの方程式もあってもいいと思うので、Kチームのメンバーにはもっともっと個性を磨いていってほしいと思います。
【ペンネーム】(無記入)
■感想ありがとうございます。AKB48の取るべき道はなんでしょうか、という質問なのですが、オフィシャルサイドの言葉を借りて言うと「メジャーデビュー」という以外には明らかにされていません。それがグループとしてなのかソロとしてなのか、音楽以外も含むのかも依然としてわかりません。
でもわかっていることは「会いに行けるアイドル」「劇場からスターを作る」というコンセプトがあり、AKB48劇場があり、AKB48がいるということです。その先のことは綿密なシナリオがあるわけでなく、劇場の様子、お客さんの反応などを見ながら対応していく、というのが現実だと思います。
Kチームしか行かない人がいることも知っていますが、一方でゴールデンウィークが過ぎてからKチームの動員が伸び悩んでいるのも事実です。ですので、今はAとKに分かれていますが、遠くない将来、一緒になるかシャッフルされるか1軍・2軍制になることでしょう(幻のBができるかもしれませんけど)。
ファンができることは自分が気に入った子のためになるべく劇場に足を運ぶこと、手紙などで勇気づけること、商品を購入すること、声援をかけることなどで応援することしかないのかもしれません。それでもファンのことを大切にしてくれるタレントはメジャーになっても覚えてくれているものです。
アイドルを取り巻く世界は日々刻々と変わってきています。時代の流れにはなかなか逆らうことはできません。AKB48がうまく時代の流れに乗れば成功するでしょうし、そうでなければ劇場内だけで当分ライブを続けた後、予想したくない結果になるでしょう。個人的には彼女たちがいい方向に向かっていくようにと願っています。(岡田)