2007年12月1日、初めてAKB48(チームB公演)を生で見ました。結論を先に言えば、1回で見事にハマってしまいました(笑)。この平成の世に、臆面もなくアイドルをやっている姿に、いたく心が動かされたのです。
それで、感想をコラムとして書いてみることにしました。松爺がこのコラムに書いているように、AKBは「書きたくなる、語りたくなるアイドル」ですね。
なにぶん、初見なものですから、古参の方にとっては「何を今さら」「見方が違うだろ」「1回だけで語るな」などと突っ込まれそうですが、私には膨大に蓄積されたデータがありますから、それを武器にして進めていきたいと思います。
【前説】
まずは、個人的なことから。
私は12年前まで、職場が文京区湯島でした。秋葉原とは目と鼻の先です。ドンキホーテまで歩いて15分(当時はドンキはありませんが)。おまけに、普通の会社ではなく芸能関係の個人事務所ですから、勤務時間が午前11時~午後7時。タイムカードもなく、時間はゆるゆる。
現在はここを辞め、帰郷したのですが、本当によかったと思いました(笑)。もし、ここを続けていたら…と思うと、恐ろしいです。危うく、人生を棒に振るところでした(すでに遅い説あり)。
私は東京パフォーマンス・ドール(以下TPD)の初期、客がひと桁の時代に見た経歴を持っているのです。AKBを見に行かないわけがないでしょう。
朝はドンキ前で並び、チケットが取れたら事務所へ。夜はちょっと前に抜け出して秋葉原へ…。という生活になっていたに違いないのです。確実にチャリを買っていますね。
少し時間を飛ばして2005年。私は9月から夜勤になりました。ここでも神の御加護があったわけです。AKBが生まれようが生まれまいが、何もできない状態が延々と続いたのです。
そして2007年11月。ある事情があり、1か月の休暇を取りました。ふだん、上京することすらままならないので、一度はAKBを見ようと思い、劇場へ。正直、あまり期待もしていなかったのです(実際の話、メロディービーの方を見たかった)。それが見事に裏切られようとは…。やはり、見なければよかった(笑)。
【ハコと地理の考察】
劇場内に入って、たまげましたね。あのステージ前方の二本の太い柱は何でしょう。ちょっと考えられない。私はミニコミをやっていた関係で、数多くのハコに行きましたが、こんな観客軽視のつくりは見たことがありません。
大相撲の話をしましょう。
両国国技館の土俵上には屋根がありますね。その屋根の四方に、房がついています。この房の意味を知っていますか?
これは「柱」なのです。本当は土俵の周囲には4本の柱が立っているのですが、観客の視線の妨げと、力士のけが防止のために柱を取り去ったのです。この房は「ここに柱はないけれど、本当はあるんですよ」という意味があるのです。
しかし、こんなことは私が薀蓄(うんちく)をたれる前に日本人の常識なのです。
つまり、AKB劇場の立ち上げスタッフはこの常識すら知らなかったということになります。
何とかならなかったんですかね。今となっては、何を言っても遅いけど。
劇場のキャパ250人、スタッフ、タレントもろもろ計300人掛ける60キロとして、18トンの重量が8階の床にかかっているわけです。おまけに、野呂佳代の体重まで考慮に入れると、とてもあの柱は抜けませんね。構造計算が狂い、5階のメイド喫茶がつぶれることになる。これはいけませんね、ご主人様。
秋葉原にこだわった結果、無理が生じ、その無理が延々と続いている。
神田の宮地楽器ホールという手はなかったのでしょうか。幕張にあっても東京ディズニーランドというが如し。
神田ではダメというなら、新規物件から探すしか手はなかったんですよ。
【チケット争奪戦の是非】
劇場に入るには、チケットを入手しなければいけません。私もメールに初挑戦してみました。1日、2日の地方枠、1日の一般枠すべて外れ。
しかたがなく、1日は始発の新幹線に乗り、ドンキ前に着いたのが朝8時。チケットは入手できたのですが、ここでもいろいろ考えることがありました。
主催者に言いたいのは、「完全メール抽選制」にしてほしいということ。
現行のやり方だと、客も主催者も負担が大きいし、ライトなファンは入れないという難点があります。ヲタを多少排除してもいいと思います。そうしなければ客層が発展していかないでしょう。
完全メール抽選制は「メアドを多く持った人の勝ち」との意見がありましたが、いくらメアドを持っていても本名は一つのはず。不正にはつながりにくいと思いますが……。とにかく、現行のやり方ではダメですね。
【夏まゆみの才能】
さて、ステージングです。アイドルアイドルしていて、非常によかったですね。これは、ひとえに演出・振付担当の夏まゆみの才能によるものでしょう。
モーニング娘。の振りを見て「ちょっと変な、面白い振付だな」と感じたのですが、AKBも近いものだろうと思っていました。
だが、全然違う。夏まゆみの振付は、楽曲の雰囲気と詞の意味を汲み取って作っていくもの―ということがよくわかりました。
例えば、わかりやすいところで「スカート、ひらり」の♪女の子にはスカートひらりひるがえし♪なら、ちゃんとスカートがひるがえるような振りになっている。非常にベタなんですよ。そして、アイドルの文法にも忠実にのっとっています。典型的アイドルステップの多用から、それがうかがえます。モー娘。は詞が変わっていたので、それに合わせていただけだったんですね。
特筆すべきは、全員左手にマイクを持っていたこと。これは100パーセント近く統一されていました。左手にマイクを持つのは、アイドルの基本なのです。
また薀蓄をたれると、人間の目線は対象物を左上から右下へと移動させながら見る、という習性があるのです。つまり、最初に目が行く左側(アイドルにとっては右側)を空けておくのは正しいのです。
一度だけ、マイクを右手にしていた子がいましたが、すぐに持ち換えていました。どうやら、髪を直していただけのようです。
アイドルの振付といえば、ピンク・レディーやおにぎりにぎり隊の振付を担当した土居甫(はじめ)が第一人者ですが、先日逝去されました。
夏まゆみには、土居甫の後継者として今後も頑張ってもらいたいですね。
【他グループとの比較】
・おニャン子クラブ ・桜っ子クラブ ・原宿探検隊 ・東京パフォーマンス・ドール ・キラキラメロディー学園 ・制服向上委員会 ・チェキッ娘 ・モーニング娘。
イベントを間断なく続けてきた大人数グループアイドルを列挙してみました。
秋元康がかかわっている関係でおニャン子、イベント形態が似ている点でTPDと比較するケースが多いようですね。私もステージの内容はともかく、TPDにかぶる部分が多いと感じました。
イベントの日程密度。最初はガラガラ、次第に満員という状況。ファンのブログ(ミニコミ)合戦。脱退や新規加入。居酒屋が盛況(笑)。
TVで見た限りでは「桜っ子クラブ」「よくできた制服向上委員会」との感想でしたが、今は……無理やりかもしれないけれど「規制が厳しい原宿探検隊」にしておきましょうか。
原宿探検隊の初期はルックスが非常によかった。しかも規制がゆるゆる状態。タレントとファンの距離が近いなんてもんじゃない。野放しに近い。出待ち入り待ち当たり前。写真も撮り放題。ファンにとっては極楽でしたね。同姓同名の子がふたつのグループに在籍している(いた)ことも、何かの因縁を感じさせます。
投下資本が大きいほど、規制が厳しくなる法則があります。今のAKBはガチガチに固められています。それが悪いと言っているのではありませんが、「会いに行けるアイドル」を標榜していることと、規制が強くなる傾向は矛盾しているように感じます。
それにしても、AKBはアイドルとしてのルックス水準が高い。簡単にいえば「まゆゆ、かわいい」ということです。
【今後の展開予測】
とは書いてみたものの、これは秋元康でもわからないんじゃないでしょうか。
一般論でいうと「形あるものは必ず壊れる」。いつかは解散、消滅するでしょう。それが5年後か7年後かはわかりませんが。
現在の状況は当分続くでしょう。ある意味安定しています。私の経験から推測するに、まだ5合目までいっていない。3~4合目の近辺でしょう。これからも、柱の近辺でドラマが繰り広げられるということです。
唐突ですが株式に例えると、AKBはまるでフォスター電機(6794)のようです。株価が右肩上がりの上昇局面。買い板(タレントのパフォーマンス)と売り板(ヲタ芸)の微妙なバランス。一般にはあまり知られていないが、ipodのイヤホンの製造という最先端事業。
私はフォスター電機に4回買いを入れ、すべて利益になっているのです。つまり、相性がいい。
嫌な予感がひしひしとしています。
いつ終わるのかわからない夢を見に、秋葉原に再び赴く日が近いうちに来そうな気がしています。(文中敬称略)