更新情報

検索する

AKB48物語「ひまわり組公演とチームB 1stステージ」

written by 岡田隆志

  Last Updated: 2007/10/05
本記事を無断で複製・転載することを禁じます。
copyright(c)2001-2022 Scramble-Egg Inc.

2007年7月1日、AKB48はチームA+チームKを混成した“ひまわり組”による『僕の太陽』公演をスタートさせました。

この“ひまわり組”は従来の“チームA”と“チームK”および研究生のなかから合わせて16名(+数名)が日替わりキャストで公演を行うもので、メンバーの劇場外の活動をさまたげずに公演が滞りなく行えるように考えられたものです。

同時に、入場料金も従来の2,000円から3,000円(一般男性)に変更されました。

3,000円という値段は決して安くはないことから、公演を見に来るかどうかは出演キャストによって判断するという行動パターンが一般的となり、日によってチケットの売れ行き(売り切れ時刻)がかなり変化してきているようです。

“推されメン”か“干されメン”か

チームAとチームKの差はほとんどなくなり、逆にチーム内での格差が見えてくるようになってきました。そうなった大きな要因は、シングル曲の「選抜メンバー」制度からではないかと想像しています。

曲によって選抜されるメンバーは違うにせよ、選抜されるにはそれなりの理由があるとともに、選抜されない理由もあるのです。そこが芸能界の厳しいところですが、いずれ目に見える形で差がついてしまうので、「選抜メンバー」制度のせいではないでしょう。

ただ、毎日のように応援しているファンの目から見ると、お気に入りのメンバーが“推された”ほうか“干された”ほうかは当然気になるでしょうし、なぜ“干された”のか納得いかないと思った方もたくさんいると思います。

「選ばれる」理由として、ファンが多いというのはそれなりの大きな理由です。支持してくれる人がお金を出してくれてこそ、ビジネスとして成り立つわけですから、ファンが少ないということはビジネスにならないということなんです。

「選ばれる」理由として、プロデューサーやスタッフの経験則からの“勘”も当然挙げられます。見た目や売り方がわかりやすければ即、戦力になるわけですし、今までにないタイプでも“オーラ”がある人というのは選ばれやすくなります。

ファンが見えない場所での態度や姿勢も実は重要なファクターになります。特に「最後の1人」を選ぶときなどは、ひたむきさ、真剣さ、人当たりの良さ、伸びしろの多さ、対応の柔軟性、素直な性格など、社会人としての要素も大切になってくるでしょう。

グラビアの世界で言えば、「あの子でどうかな?」とキャスティングで迷ったときに、以前そのタレントと仕事をしたことのあるカメラマン、スタイリスト、ヘアメイクに「あの子どう?」って聞くようなものです。

私もかつて好きになったグループアイドルのメンバーが不遇なポジションにいたため、それがかえって応援する気をかきたてられたりしたので、そういう経験を積んできた人は干された状況でもファンとして楽しめるのではないかと思います。ただ、みなさんも薄々感じているとは思いますが、一生懸命応援したからといって芸能界で成功するわけではないのです。

「スタメン」という発想でいいのでは

ひまわり組の「僕の太陽」公演での出演メンバーをよく見れば分かると思いますが、中盤のユニット曲はダブルキャストになっていて、表と裏のメンバーが同時に出ることは滅多にないはずです。

表、裏という言い方が良くなければ、先発とリリーフでも構いませんが、たとえば前田敦子と成田梨紗、小野恵令奈と奥真奈美、篠田麻里子と大堀恵、大島優子と川崎希……が同じ公演に出ることはほぼ100%ありえないので、3,000円払って見る立場の人のことを考えればチケットの売れ行きがキャストによって変わるのは当然のことです。

では、チケットの売れ行きや人気を考慮してキャストを完全に平均化させるとなると、関係者に公演を見てもらうときに、「ベストなメンバーではないけれど…」というエクスキューズをしなければならないのも困りものです。

だから現時点での「表」のベストメンバーを決めて、それを「スタメン」扱いにして関係者に見てもらうというのはプロデューサー的な考え方としては当然のことです。こればかりはファンが声を上げてもすぐには反映されないものだと思っています。

映画、グラビア、テレビ露出の先にあるもの

今年(2007年)の夏は映画『伝染歌』出演やシングル「BINGO!」「僕の太陽」の2ヵ月連続発売、Chocoloveのシングル、水着グラビア露出、夏休み1日2回公演など、ファンにとっては劇場だけでなく、映画のキャンペーンやシングルCDの握手会などで忙しい夏になりました。

“劇場を飛び出して”いくところから一般の人に認知されていくという構図は明確になってきたので、どんどん飛び出していくしかありません。『伝染歌』ではかなりの媒体露出がありましたが、果たしてどのぐらい知られたのでしょうか。

また、2誌で水着グラビアが出ました。賛否両論ありましたが、話題性という意味では一般のアイドルファンにも知られるチャンスがかなり増えたと思います。

このような“大量露出”で感じることは、ターゲットを絞り込めないまま“マス”の海へAKB48情報を“たれ流し”ているだけではないか、ということです。

Chocoloveや『伝染歌』は主に女性に、「BINGO!」「僕の太陽」はハロプロファンはじめ音楽好きなアイドルファンに、水着グラビアはグラビアアイドル好きな男性ファンにと、一応の棲み分けがあり、そのとおりの露出をしたはずにも見えるのですが、何かピンとこないのはなぜでしょうか。

それは結成当初からAKB48がシアターを通して集めてきたはずの「秋葉原が持つ地熱・エネルギー」が“マス”を通した露出で過放熱してしまったのではないか、と思えるふしがあるのですが、みなさんはいかがお考えですか?

メディアに露出することは“消費”されることを意味します。露出するタイミングで消費に耐えられるだけの内面の蓄積がないとすぐに飽きられてしまいます。今年の夏の大量露出のタイミングは決して悪くなかったはずだったのに、なぜツボにはまらなかったのでしょうか。それはこれからの歴史が教えてくれることでしょう。

チームBという“甘えんぼうな末っ子”

2007年4月8日から10月2日までチームBによる1stステージ『青春ガールズ』公演が行われていました。私も間をおきながら公演を数回見せていただいたのですが、ひまわり組もそうなんですが、以前と比べると客層がだいぶ入れ替わっていることにまず驚きました。

前回のコラムにも少し書かせていただいたのですが、チームBに感じることは「貪欲さの欠如」ではないかと思うのです。もちろんそれぞれ成長はしているし、見た目も洗練されてきているのはわかっているものの、今ひとつ見ていて乗り切れないのは「貪欲さ」、もしくは別の言葉でいえば「ひたむきさ」が足りないのだと思うのです。

それはそれぞれのチームが持つ歴史事情に基づいているので仕方ないことですが……。

チームAは「AKB48」という存在自体、どうなるかもわからないところから始めているからこそ、ここの中で歯を食いしばってでもやり抜くしかない決意が必要でした。

チームKはチームAと常に比較され、チームAにないものを常に求めようとし、チームとして団結していったからこそ、ファンが彼女たちを認め、応援してくれるようになりました。

チームBは「AKB48」という存在がアイドルファンの間で認められ、そのグループの一員になること自体がステータスであり、加入できたことですでに一つ目の夢をかなえている点がチームA、チームKと違うのです。

ですから、AKB48としてステージに立つことで満足できるでしょうし、チームA、チームKは比較の対象ではなく、あこがれの対象であり、チームBとしての団結力はどうしても弱くなってしまっているのではないでしょうか。

そういう背景があるので、応援するファン側も彼女たちに「何か熱くさせるもの」を感じ取りにくいと思っているのではないかと思います。個人的にはチームAから転籍してきたメンバー、以前から知っているメンバー、ステージを重ねるごとにキャラが目立ってきたメンバーなど、気になる子はいるにしても、全体的に感じる力は弱いと言わざるを得ません。

チームBは北京ライブも実現し、エンタ!371の『AKB48+10』でもフィーチャーされているようですので、こういう経験を糧に2007年10月7日から始まる『会いたかった』公演で、彼女たちに足りなかったものが少しでも解消されることを心から願っています。それは劇場公演のクオリティを維持していくうえでとても大切なことだと思うからです。

味方を増やすために

雑誌『サイゾー』2007年8月号で秋元康総合プロデューサーがAKB48についてインタビューを受けていて、その中で「結果を急ぐ時代に10年計画で立ち上げたプロジェクト」という発言が目に留まりました。

10年も続けるということは30代のファンは40代に、40代のファンは50代になるということです。メンバーはずっと現役でいるわけにはいかないので劇場は卒業することになろうかと思いますが、劇場につくファンの平均年齢は多少の新陳代謝をしながら上がっていくことが予想されます。

そして、AKB48が10年後(実際には8年後)にどういう形で存在していられるのか、というのは誰も知ることはできません。ただひとつ言えることは、現在が連続して未来につながっていくということだけです。

ファンの中にもいろいろな人がいるわけで、毎日劇場に来るファン、ときどき(たまに)劇場に来るファン、握手会には顔を出すファン、ホールコンサートには足を運ぶファン、雑誌やテレビを見て親しみを感じるファン……そういう人たちをできるだけたくさん巻き込むことでしか、アイドルは生き続けることができません。

現実的にはアイドルを支えるスタッフ、売り出すプロデューサー、スポンサー、マスコミなども味方につけなければならないでしょう。一人だけでできることは何ひとつありません。

劇場に足を運べばわかることですが、客層はかなり変わり、販売される商品も多様化し、AKB48に求めることも多様化したように感じます。多様化したことはビジネスの裾野を広げることでもあるので悪いことではありませんが、一方でファン層が広がらないまま客単価が上がってきているという批判もあることも事実です。

そして、メンバーの所属事務所が分散したことで、仕事の入り方にばらつきが出たり、10年先までは考えていない事務所の方針と方向性がずれてくることも考えられます。

味方を増やすためにすべきことは次の3つに集約されると私は考えます。

  1. 公演を充実させる
  2. スターを輩出する
  3. 心を熱く駆り立てる何かを持ち続ける

1.については現在でも充実しているのですが、毎日続けるとなると、お客さんにもたれて(甘えて)しまいがちです。ファンに助けてもらうこともあるとは思いますが、プロ精神は忘れずにいていただきたいです。そして、コンサートをすることでふだん見ることができない隠れファンの方にAKB48のパワーを見せつけていただきたいものです。

2.はグループが継続していくためには必須な事柄です。「あの○○がいたアイドルグループ」というだけで出身グループのブランド価値が急上昇します。安室奈美恵、篠原涼子、菅野美穂もかつてはアイドルグループの一人でした。現メンバーから誰か1人でもブレイクしてくれるといいですね。

3.は心の問題です。お客さんを飽きさせず、メンバーもスタッフも飽きずに続けるということは本当に大変なことです。初心を忘れるな、と言葉にすることは簡単ですが、人間は“慣れることで居心地がよくなる”動物です。ハングリー精神をいつも持ち続けて、ハートを熱くさせるパワーや魂の力をお客さんと一緒に維持できれば10年もはるか遠い夢ではないでしょう。

長々と述べてきましたが、しばらく展開があるようでないのが、メンバーやファンの士気の低下につながってきているような気がします。よりよいコンディションでもう一度水着グラビアにチャレンジするとか、秋冬にでもホールコンサートをして活気づけていただきたいものです。

結局のところメンバー本人も、スタッフも、ファンもメディアもできることはそれぞれに限られているので、結成時に考えられていた“地熱”をもう一度見つめなおして盛り上げていきたいものです。私は毎週末取材で秋葉原に行ってますが、まだまだアキバにはパワーがあるように感じています。

●関連記事

AKB48関連コラム

本記事を無断で複製・転載することを禁じます。
copyright(c)2001-2022 Scramble-Egg Inc.

【満足度】 4
【コメント】今後、更なる展開を行うのなら、事務所の姿勢・行動の変更を行わなければシリ足状態でしょう。秋葉原に拘らずに全国でイベントを行う事や、CD発売イベントの場所や特典を全国的に行う。あとは劇場入場チケット販売形態の見直し。東京近郊から出てイベントはしないし、地方ファンが劇場へ行こうにもチケットが取れない・取りにくい。特に遠方からだと東京に行く予定の日にしか行けないので、予約受付は最低1ヶ月前から行わないといけませんね。チケットも取れないしイベントも近場で行わないようでは「もういいか」ってファンが増えるのは確実。PVにしても「桜の~」「スカート~」「僕の~」はDVD化されず。一部のネットで流されているだけにすぎない。これで新規ファンを増やすのは難しい。!
【ペンネーム】望遠スナイパー