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「AKB48」の読み解き方

written by 岡田隆志

  Last Updated: 2005/12/10
本記事を無断で複製・転載することを禁じます。
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12月8日に秋葉原で本格始動した、秋元康氏総合プロデュースのアイドル発掘プロジェクト「秋葉原48プロジェクト」の公開リハーサルを幸いなことに取材することができたので、そのレポートを補足する意味でコラムを緊急発表します。

なぜ幸いかといいますと、本サイトはオーディションサイトでもあり、出演者募集をしていた関係で呼んでいただいたのですが、取材に来ていたマスコミはテレビ、新聞、オーディション誌がメインで、アイドル関係は本サイトだけだったかもしれないからです。

まずは「秋葉原48劇場」オープン発表会&公開リハーサルの記事をじっくりと読んでいただければと思います。

その仕掛け、仕組みを読者のみなさんがどう読み解き、行動するかというのが今後のこのプロジェクトの結果を生むことになるでしょう。

私は、私なりの読み解き方をここでちょっだけ先に披露しておきますので、あとはみなさんが各自で劇場に足をお運びいただいて判断してください。

甘く危険な香り

秋元康、夏まゆみラインとなれば、まず想起せざるを得ないのは「おニャン子クラブ」と「モーニング娘。」です。そしてまた、劇場で毎日イベントがあり、1,000円で、1時間のショーで歌と振り付けがあり、1軍2軍があるといえば「東京パフォーマンスドール」を思い出さざるを得ません。

昔っからアイドルファンを続けている中年アイドルファンにとっては、甘い甘い危険な罠だというのはもうお分かりでしょう。過去のいい思い出、悪い思い出すべてがまるで悪夢のように、しかも今度は毎日繰り広げられるのです。

「危険な匂い」というのはもちろん、ファンとして“のめり込む”可能性が極めて高いという意味で、です。

極めて完成度の高い楽曲(秋元康氏の全曲作詞によるオリジナル曲)に、(モー娘。を想起させる)極めて華やかなアイドルグループの振り付け、そして未完成な生まれたてのアイドルが演じるとなれば、黙って見過ごすわけにはいかないのです。

誰が見るべきか

ここまでは完全にマニア向けな誘惑メッセージですが、マニアといっても本当にいろんな層を巻き込む要素があるので、とにかくできるだけ早く一度は足を運んでみるとよろしいかと思います。

ただ、さきほども書きましたが、習慣性が高いので、これを見たことで人生狂っても私は責任持てませんので、あくまでも自己責任(笑)でよろしくお願いします。

オープン前日の記者会見のあと、業界関係者向けの公開リハーサルが行われました。そこで見たこと、感じたことは、「コンテンツが良くできてる」ということです。

  • 演じるアイドルが誰であろうとステージとして成立するようになっている
  • 楽曲が80年代のアイドルポップス全盛期のテイストなので、オールドファンや新しく80年代(昭和の時代)に注目した若くて新しい世代、親の世代に共感できるようになっている
  • 歌詞の裏側にあるストーリーがきちんと観客側に伝わるだけでなく、観客がその歌詞から頭の中で出演するアイドルを動かしながら新しいストーリーを作りやすくできている
  • 未完成なものから成長していく過程そのものを見せているので、習慣性が高い

このような仕組みになっているので、どうしても「もう1回見たい!」となるように出来ているのです。だから1回見てしまったマニアは必ずはまってしまうと断言してもいいでしょう(苦笑)。

かつて原宿ルイードで東京パフォーマンスドールが定期的にライブをやったように、もっと昔のことをいえば何よりも優先して『夕やけニャンニャン』を毎日見る(あるいはスタジオに行く)といったことが秋葉原48劇場で起きないとも限らないということです。ものすごく控えめな言い方をすればの話ですが。

秋葉原は、アイドル(3次元)のファン、アニメやゲーム(2次元)のファン(声優・フィギュア・メイドコスプレファン含む)、パソコンマニア、外国人観光客ですでににぎわっていたものが、今夏、東口の再開発により一般の家族連れ、そして女性同士、地方からの観光客も集まるようになり、どえらいごった返しようなのです。

そこにAKB48専用シアターを作るとさらにどういう人が来るのかといいますと、

  • 新宿、四谷、市ヶ谷のライブハウスで繰り広げられているアイドルライブのお客さん
  • 地方発アイドルの追っかけ
  • モー娘。にいい加減飽きたけど歌やパフォーマンスが好きなモーヲタ
  • アイドルになりたいと思っている女の子

こういう人たちを巻き込むことになります。

今挙げた人たちはまだそれほど秋葉原に足を踏み入れていないので、いろんなものが渦巻いていくプロジェクトになってしまう可能性は十二分にあると言っておきましょう。

すでに競争は始まっている

オープン前日の公開リハを見たあとの興奮がやまなかったので、自分に言い訳を作る必要がありました。

「初日にはどんな客が来るのか、何人来るのかを自分の目で確かめよう」

そんなのは言い訳にしかすぎません。楽曲を聞きたかったのと、前日に出た20人の顔と名前とキャラをできるだけ早く認識するとともに、将来ブレイクする可能性が高い子は誰なのかを自分の目でいち早く確認しておきたかったからです。

シアターには200人強が入るそうですが(もっと入ると思います)、初日は椅子席はほぼ埋まっていました。ただし、座席は家族、友人、関係者らしき人でほとんどが埋め尽くされ、純正(?)アキバおたくは私が見る限り5人もいなかったように思います。

その5人からどういう風に広がっていくのかというのも冷静に楽しみたいところですが、それよりはこの時点で出演している20人すべてが生き残れるわけではないことがはっきりしている現実が見えてしまうところでしょう。

記者会見のときに質疑応答の時間がなくて聞けなかったことがいくつかあって、結局その日のうちにはわからなかったことをいくつかメモとして残しておきます。

  • 7,924名から20名をどのような審査基準で選んだのか
  • 卒業後のメジャーデビューは歌手を指すのか女優・モデル・タレントも含むのか
  • このプロジェクトは最低いつごろまで続くつもりでスタートしているのか
  • 1軍2軍は投票で選ぶとのことだが、どういう形で行うのか

これらについては、何も明らかにされていなく(初日は投票らしきものはなし)、広報の方は「続けていくなかで少しずつ明らかにしていく」とおっしゃるだけで実際、どう転ぶかは本当にわからないのが現実ではないかと思うわけです。いっそのこと近くにいた秋元さんに直撃質問したほうが良かったのですが、広報の方に先に話を振ってしまったため、遠慮してしまいましたよ。

今回のオープニングメンバーの中には地方からこのプロジェクトに参加するために転校(もしくは中退?)し上京してきた子も何人もいたし、今後追加メンバー募集をする際にどんな基準で選んだのかの情報を、将来参加希望の女の子たちのために早く提供してもらいたいものです。

私なりの読み解き方

この秋葉原48プロジェクトですが、シアターが満員になるのはそんなに遠くない日にやってくるような気がしています。初日のマニア客は5人ですが、私がここでこんなコラムを書かなきゃいけないほどコンテンツとしては文句はないので、秋元康氏、夏まゆみ氏、金のかかってそうなプロジェクト……そういったキーワードや先入観に毛嫌いされなければお客さんは増えてくるでしょう。

今のオープニングメンバーの20人は、はっきりいって地方発アイドルやスクール発表会とたいして変わらないです。ものすごい美人がいるわけでもなく、ものすごく歌やダンスがうまい人など一人もいません。かえってそこが魅力という人もいると思いますが、ここから先が明らかに違ってきます。

毎日ステージやります。毎日お客さんの顔を見ます。お客さんやスタッフの反応を毎日見ます。そこでやる気のある子とない子の差がどんどん広がってきますし、毎日やることで成長するスピードがはるかに変わってしまうのです。それは東京パフォーマンスドールやモー娘。にもなかった過酷なステージ回数によるサバイバルレースなのです。

ファン投票がどういう形になるかはわかりませんが、すでに20人のなかで誰が人気が出るのかは私にはわかっています。お客さんの顔を覚えて笑顔をふりまく能力を持っている子もすでにいました。地味な泣き虫の子、グループ内権力闘争に巻き込まれそうな子……そんなのが2回のステージだけで見えてしまいます。

ファンの立場としては、過去にグループものを見てきた思い出がよみがえり、また同じことを繰り返すのです。「○○ちゃんを見るベストポジションはここ」とセンターじゃない位置にわざと座ったり、最初は○○ちゃんだったのが○○ちゃんのファンに鞍替えしてちょっとややこしいことになったり、昔からいるファンと新興勢力のファンとの目に見えないライバル意識だとか……また同じことが繰り返されるのが見えてくるようです。このアイドルを見るために人生の方向性が変わってしまう人も何人か出てきそうです。

今回はどこの立場にも深入りしないように心がけたいのですが、先のことなどわかりません(苦笑)。2回見てはっきりわかったのは「はまる要素120%なので、はまる人ははまる」ということです。そして、女の子たちのステージでの「目の輝き度」の差がすでにかなりあるということです。顔と(自分でつけた)ニックネームが一致した子は7~8人、特に注目してる子は2人です。2回見てこれだけのこと書けてしまうんだから秋元康さんもたいしたプロデューサーです。

ということで、気になったらまず1回、秋葉原48劇場に来てください。そして感想を、あなたの「読み解き方」をちょっとだけ教えてください。

[2005/12/11追記]用語解説:
【秋葉原48プロジェクト】(あきはばらフォーティーエイト プロジェクト)=プロジェクトの総称
【AKB48劇場】(エーケービー フォーティーエイト シアター)=秋葉原ドンキホーテ8Fにある秋葉原48プロジェクト専用劇場
【AKB48】(エーケービー フォーティーエイト)=秋葉原48プロジェクトがAKB48劇場で行うステージで演じるアイドルユニットの呼称。

cover スカート、ひらり
AKS
1,050円(税込)
CD
2006年6月7日
作詞:秋元康、作曲:岡田実音
cover 密着!「AKB48」~写真集 Vol.1 the・デビュー
講談社
1,890円(税込)
ISBN 4063527425
2006年3月2日
cover 桜の花びらたち
AKS
1,300円(税込)
CD
2006年2月1日
作詞:秋元康、作曲:上杉洋史

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【満足度】5
【コメント】よかったです。
【ペンネーム】そうだっち

【満足度】 3
【コメント】 記事読ませていただきました。AKB劇場がオープンして2週間、こちらの記事にもう少し早く出会っていれば、毎日のようにAKB48に足を運ぶことも無かったかもしれません。今は完全にはまって、アキバだけでは足りずにお台場まで足を運ぶ日々です。結論としてはAKB48の成功のポイントはどこにあるとお考えですか?。記事の内容は100%あたっていますね。目の輝きの差は目標が見えている子とまだ見えていない子の差ですね。誰に注目したか知りたいところです。
【ペンネーム】takashi

■感想ありがとうございます。年内進行の突発仕事が入り、劇場やお台場にはしばらく足を運ばずじまいですが、きっといろんな変化があるのでしょうね。テレビのCMや番組エンディングに決まったり、雑誌にも取り上げられたりする予定だそうですから、話題作りの面ではマスコミには注目されていることは間違いないですよね。

成功のポイントはどこにあるかについてですが、いちばんわかりやすいのはメンバーの誰か1人がメジャーシーンで活躍すること(例えば地上波のテレビ番組のゴールデンタイムに出演)だと思いますが、その前に、報道番組でのレポートの中で「“ポスト”モーニング娘。」というキーワードがちらつきだした頃がポイントだと思っています。そうなればいろんなものが転がり出すはずです。

目の輝きの差は本当にすぐ変わるみたいで、最初に見たときと最近ではずいぶん違いが出てきているようで、見てないとその変化に気づけないので落ち着かないです。誰に注目しているのかはまだちょっと回答を引き延ばしておきたいですが、見ている方々がblogで話題にしている子とさほど変わるわけではありません。

ところで、先日、ドリームアイドルのサイトのほうでもAKB48についてのコラムを書きました(秋葉原48プロジェクトの波紋)。コラムを書いてて気づいたのですが、このステージは、見ている者に「グループアイドル遍歴とグループアイドルに対する世界観」を問いかけているので、それにファン(あるいはマニアあるいはヲタ)が勝手に反応してしまっているのではないかということです。そういう意味では、ファン側のグループアイドルに対する世界観を確かめる題材としてはかなりよく出来ているステージです。そんなうがった見方をするのもひとつの楽しみ方ということで。(岡田)

【満足度】 1
【コメント】 素人のステージを金払って見るのは馬鹿らしい。
秋葉でよくあるイベントでの握手会とか写真撮影とか出待ちとかのコミュニケーションの要素がないのに「会いに行く」と言うコンセプトを掲げるのはちゃんちゃらおかしい。
コンセプトとしては昔やってた「歌姫」に近いが、当時でも昔懐かしむアイドルオタが素人(プレアイドル)が歌う80~90年代のアイドルポップスを聞いて騒ぐだけの集まりとしか思えなかったので、今やってもそれの焼き直しにしか思えない。秋元の名前さえ出せば金稼げるとでも思ってるのだろうか。
【ペンネーム】な

■感想ありがとうございます。こういう意見も想定されていたので投稿していただき大変ありがたく思っています。それをプロジェクトやメンバーがどう乗り越えていくのか、乗り越えていけないのかというのもひとつの見どころでしょう。初日のときから何回か見ましたが目に見えない大きな変化が起きているようです。その変化に気づく必要はありませんが、ライブものはステージと客席で実は目に見えないいろんなコミュニケーションをしていることが多いので、それが楽しめる人だと“会いにいく”というのはあながち間違った表現ではないと個人的には思います。(岡田)